梶ピエールのブログ

はてなダイアリー「梶ピエールの備忘録。」より移行しました。

2009-01-01から1年間の記事一覧

ザ・ポリシー・ミックス

『日本経済新聞』5月22日付記事より。 【北京=高橋哲史】中国の国家発展改革委員会は21日、昨年11月に打ち出した総投資額4兆元(約55兆円)の景気刺激策について、4月末までの実施状況を発表した。低価格住宅を21万4000戸建設したほか、445キロの高速道路が…

補足

そもそも文革期における少数民族に対する迫害の実態は、まだほとんど明らかになっていない、といわざるを得ない。例えば、中国の民族問題に関する基本的な文献の一つには、以下のような記述がある(167ページ)。中国の民族問題―危機の本質 (岩波現代文庫)作…

文革と内モンゴル

Acefaceさんのコメントより。 これお読みになりました?静岡大学の楊海英(モンゴル名はオーノス・チョクトさんでしたが、どうやら最近帰化されたようです。名前が大野旭さんになっていました。)けっこう楊さんの著書のトーンが少しづつ変化していたので、…

忌野清志郎と「公共性」に関する試論

批評家の吉本隆明は、1980年代から忌野清志郎をしなやかな感性を持ったアーチストとして高く評価をしていたが、1988年に発売されたRCサクセションの反原発ソング「サマータイム・ブルース」(アルバム『COVERS』に収録)の歌詞を、個人発行していた雑誌『…

『四川のうた』

公式サイトはこちら ご存知のように神戸市で新型インフルエンザの感染例が出たため、一部のキャンパスが神戸市中央区にあるわが大学も来週いっぱい休校となった。お気楽な大学教師といえども一応計画を立てて教育と研究その他に仕事を振り分けているので、突…

中国と「ドルの罠」

http://www.voxeu.org/index.php?q=node/3551より。 この論説の著者、Domingo CavalloとJoaquin Cottani(わたしはどちらも知らんかったが)によれば、中国などの新興国が保有するドル資産価値の下落リスクを避けるために為替介入を行い、結果としてさらに外…

知らぬは恥―不況脱出を名作に学べ―

昭和三十二年から翌三十三年にかけて制作された、千葉泰樹監督の『大番』四部作は、昭和の流行作家、獅子文六による経済小説の草分けともいうべき小説を原作とし、日本経済の動向について臨場感あふれる描写娯楽映画である。当時は「知らぬは恥」とまで言わ…

『スラムドッグ$ミリオネラ』

良質のラブ・サスペンスに、現代インド社会の問題点が漏れなくトッピングされた快作。社会的背景については下のブログ記事が詳しい。 http://movie-sakura.cocolog-nifty.com/blog/2009/04/post-debf.html この記事を含め、この映画についてはすでに優れた批…

BMDを棄つるの覚悟

珍しく反響の大きかった拙エントリ「経済学的思考のすすめ」について、Baatarismさんからトラックバックをいただいている。 まず、北朝鮮が打ち上げに失敗して日本国内の市街地に墜ちてきたときの経済的な損害は大きいでしょう。しかし、その一方で、北朝鮮…

セン・イースタリー論争(?)を読む(下)

前回のエントリで取り上げた、センのNYRの論説に対しするイースタリーの「マオイズムへのノスタルジア」という批判はフェアなものではない。センの主張を評価するには、それが彼の従来からの「貧困」「飢餓」「飢饉」に関する独自の見解(権原アプローチ)に…

最近のお仕事

淡島千景―女優というプリズム作者: 淡島千景,志村三代子,御園生涼子,鷲谷花,坂尻昌平出版社/メーカー: 青弓社発売日: 2009/04/01メディア: 単行本 クリック: 29回この商品を含むブログ (36件) を見る 実は実物がまだ手元にないのですが、そろそろ店頭にも並…

セン・イースタリー論争(?)を読む(上)

ちょっと前に、資本主義経済についてのアマルティア・センの論説にウィリアム・イースタリーが噛み付くという出来事があった。どちらもはてな日記に日本語訳が存在するので、関心のある方はまずそちらを参照いただきたい。いくつかの論点があるが、私の能力…

経済学的思考のすすめ

一連の北朝鮮関連の報道については個人的に違和感を感じることばかりだが、中でもおかしいと思うのが、北朝鮮政権の一連の行動に関する「意図」については盛んに分析・憶測がなされる一方で、それに反応する日本政府の「意図」についてはほとんど問題にされ…

中国経済は今年半ばには底入れし、東アジアの経済回復に寄与する

世界銀行のレポートより。 The latest half-yearly assessment of the region's economic health, aptly titled "Battling the Forces of Global Recession", says there have already been signs of China's economy bottoming out by mid-2009. China's po…

地に足をつけよう

農民も土も水も悲惨な中国農業 (朝日新書)作者: 高橋五郎出版社/メーカー: 朝日新聞出版発売日: 2009/02/13メディア: 新書購入: 1人 クリック: 28回この商品を含むブログ (7件) を見る これも草思社的なセンスの(しかし草思社ほどキレがない)タイトルだな…

いただきもの

シベリア抑留とは何だったのか―詩人・石原吉郎のみちのり (岩波ジュニア新書)作者: 畑谷史代出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2009/03/19メディア: 新書購入: 3人 クリック: 55回この商品を含むブログ (21件) を見る 『信濃毎日新聞』の連載記事が単行本化…

4月のNHK-BS

BS世界のドキュメンタリー<シリーズ 1989年> ベルリンの壁崩壊 東ドイツ最後の1年 前編 〜通過統合の波紋〜 3月30日 月曜深夜[火曜午前] 0:10〜1:00ベルリンの壁崩壊 東ドイツ最後の1年 後編 〜突きつけられた現実〜 3月31日 火曜深夜[水曜午前] 0:10〜…

ゆるいインド

今月の半ば、調査のため1週間ほどインドを訪れていた。写真はチェンナイに近い、繊維産業の集積地にある輸出用アパレル工場のものである。インドの繊維産業は一般に、雇用保護を最優先にした労働政策のため企業側にとって設備投資のリスクが大きく、一般的に…

続・人民元の変動をめぐって―データを見ろ―

津上俊哉氏のブログより。 チャイナ・ブリーフィングなる雑誌を引用した17日の海外報道を読んで直ちに違和感を覚えた。発言の主とされた発展改革委の張暁強副主任は軽々にこういう発言をするタイプの人ではない。報道を流した広州日報等のウェブサイトでは…

買弁商人としての監査法人

中国貧困絶望工場作者: アレクサンドラ・ハーニー,漆嶋稔出版社/メーカー: 日経BP社発売日: 2008/12/11メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 76回この商品を含むブログ (11件) を見る 原題”China Price”に対し『中国貧困絶望工場』という邦題はどうだろうか…

最近のお仕事

『中国21』Vol.30 特集・公正と救済 土地市場と地方財政の関係について書いていますが、あまり一般向きではないかもしれません。冒頭の座談会は気軽に読めると思います。特に小島麗逸先生がかなり言いたいことを言っておられる点は注目に値するかと。

確かにバラマキですが、それが何か?

春節明けの中国が各地ですごいことになっているらしい。産経新聞の報道より。 【上海=河崎真澄】定額給付金問題で揺れる日本を尻目に、中国浙江省の景勝地として知られる杭州市は、国内旅行客の呼び込みのために「消費券」の配布を発表するなど、あの手この…

インドとマクロ経済学

インド経済のマクロ分析 (SEKAISHISO SEMINAR)作者: 佐藤隆広出版社/メーカー: 世界思想社発売日: 2008/12メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 1回この商品を含むブログ (1件) を見る 大変貴重な、日本人研究者によるインドのマクロ経済の本格的な研究書。…

今月のNHK

BS世界のドキュメンタリー<シリーズ 金融危機> 2月16日 (月) 午後9:10〜10:00 世界を震撼(しんかん)させた1か月 〜金融危機はこうして始まった〜2月17日 (火) 午後9:10〜10:00 “ドルの時代”の黄昏(たそがれ) 〜金融危機の波紋〜2月18日 (水…

トフティ・テュニヤズ氏釈放

『産経新聞』の報道より。 【北京=矢板明夫】東京大学大学院に留学中の1998年2月、一時帰国した中国で国家分裂を扇動したとして逮捕された、新疆ウイグル自治区出身のウイグル人男性、トフティ・テュニヤズ氏(49)が10日、11年の刑期を終えて釈…

革命と大衆動員

中国社会と大衆動員―毛沢東時代の政治権力と民衆作者: 金野純出版社/メーカー: 御茶の水書房発売日: 2008/10メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 4回この商品を含むブログ (4件) を見る 本書は、どちらかという総力戦を説明する概念装置であった「大衆動員…

今月のBS「世界のドキュメンタリー」より―大災害を忘れない―

四川大地震から半年 第1回 家を建てたい 〜テント暮らしの被災家族〜 (仮) 1月16日 (金) 午後9:10〜10:00 四川大地震から半年 第2回 別れたくない 〜李先生と30人の生徒たち〜 (仮) 1月17日 (土) 午後9:10〜10:00 四川大地震から半年 第3回 “…

もう米国債はいらない?

すでに日経が報じたけれども、昨年末より中国政府の金融・通貨政策のブレーンである社会科学院エコノミストの余永定氏が、これ以上の政府(中央銀行)による米国債の購入に警鐘を鳴らし、外貨準備のより多様な運用を主張する発言を盛んに行っている*1。http:…

人民元の変動をめぐって―データを見ろ―

あけましておめでとうございます。新春早々無粋な話で失礼します。 前のエントリに対する批判的なコメントがあったため、それに応えるついでに、昨年5月以降におけるドル−元レートの日々の変動をあらわすグラフを作ってみた。