梶ピエールのブログ

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補足

 そもそも文革期における少数民族に対する迫害の実態は、まだほとんど明らかになっていない、といわざるを得ない。例えば、中国の民族問題に関する基本的な文献の一つには、以下のような記述がある(167ページ)。

中国の民族問題―危機の本質 (岩波現代文庫)

中国の民族問題―危機の本質 (岩波現代文庫)

率直にいうと、新疆における文化大革命は、ほとんど少数派民族を運動に巻き込むことなく展開された。この点は新疆に限らずあらゆる少数派民族地域の文化大革命に共通した特徴ということができる。
 それは文化大革命が何よりも漢民族内部での実権派と造反派の対立として始まったことと関係があるだろう。

この本の初版本である『知られざる祈り』は、当時(1992年)としては画期的な研究書だったと思うけれども、上記の楊海英氏の研究や、チベット人作家ウーセル氏の『殺劫』*1など、当時を語る貴重な資料が次々に出てきている現状を考えれば、2008年に出された改訂版においても上記のような認識がそのまま記されているのは、ちょっとどうかと思う。