梶ピエールのブログ

はてなダイアリー「梶ピエールの備忘録。」より移行しました。

いただきもの

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 先日『現代中国の秘密結社』をいただいたばかりの安田さんからまたまたご献本いただいてしまいました。日本における外国人労働問題の実態に、安田さんなりの視点で迫った意欲作とお見受けしました。

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 中国の労働者組織に関する研究の第一人者である小嶋華通子さんの、これまでの研究の集大成です。いろいろな意味で「労働」問題は現代中国を見る上で不可欠な視点なので、待望の成果だといえると思います。

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 中国農村・農民・農業に関する研究の第一人者である厳善平さんが、格差、農民工、人口問題などといった視点から一般読者向けに書いたテキストです。蔡 昉氏の『現代中国経済入門: 人口ボーナスから改革ボーナスへ』と読み比べてみてもよいかもしれません。

kaikaji.hatenablog.com

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 廣野美和さんを中心とする立命館大学の、一帯一路構想を政治/経済、国内/国際という二つの軸から総合的にとらえようという野心的なプロジェクトの成果です。私も「一帯一路構想は新興国に「債務の罠」をもたらすか」という論文を寄稿しています。これは、「債務の罠」問題を開発経済学における「早すぎる脱工業化」論との関連で実証的にとらえようとする試みです。この問題に関心のある方は図書館にリクエストしてみてください。

第Ⅰ部 一帯一路という課題──グローバル・ガバナンスと日本への示唆

第1章 一帯一路という課題[廣野美和]
 はじめに
 1.一帯一路とは何か
 2.一帯一路の問題点をどう解明するか
 3.本書の構成

第2章 一帯一路構想と国際秩序──グローバル・ガバナンスと国内ガバナンスへの影響[足立研幾]
 はじめに
 1.グローバル・ガバナンスとガバナンス
 2.一帯一路とグローバルな秩序
 3.一帯一路と各国国内政治
 おわりに

第3章 一帯一路と日本──「互恵的援助競争」の可能性[大門(佐藤)毅]
 はじめに
 1.開発援助の略史および基本理念
 2.日中援助競争のフロンティア──東南アジアを例に
 3.ポスト・コロナ復興を巡る日中の攻防と「互恵的援助競争」への道筋
 おわりに

第Ⅱ部 一帯一路のグローバル展開の特徴と中国アクター

第4章 計画外交で推進されている一帯一路構想[青山瑠妙]
 はじめに
 1.一帯一路構想における「計画性」と「分権化・分断化」
 2.分権から集権へ
 3.計画外交で推進される中ロ関係
 4.中東欧諸国との関係強化における計画外交
 おわりに

第5章 一帯一路構想は新興国に「債務の罠」をもたらすか[梶谷 懐]
 はじめに
 1.資本輸出型の経済発展戦略としての一帯一路構想
 2.中国の対外援助と新興国の債務状況
 3.新興国の「早すぎる脱工業化」に関する先行研究
 4.中国の対外援助は「早すぎる脱工業化」をもたらしているか
 おわりに

第6章 一帯一路における貿易・投資・援助の三位一体的展開──カンボジアを事例に[中川涼司]
 はじめに
 1.中国カンボジア関係の政治経済的枠組み
 2.中国とカンボジアの経済関係
 おわりに

第7章 一帯一路構想と対外援助の多様化[楊 鵬超]
 はじめに
 1.対外援助の定義と先行研究
 2.法律の側面からみる対外援助の変化
 3.援助内容にみる対外援助の変化
 4.資金の側面からみる対外援助の変化
 5.地域の側面からみる対外援助の変化
 おわりに

第8章 大型国有企業集団──「グローバル競争」志向改革への転換[楊 秋麗]
 はじめに
 1.大型国有企業集団の「官官競争」志向改革から「グローバル競争」志向改革への転換
 2.大型国有企業集団の親会社から純粋持株会社への転換
 3.国有資本運営の課題
 おわりに

第9章 民営企業──対外直接投資の特徴と問題[薛 軍・常 君暁]
 はじめに
 1.中国の民営企業の定義
 2.民営企業のOFDIの特徴についての分析
 おわりに

第10章 華人ネットワーク──アジアの中華総商会と世界華商大会を事例に[守 政毅]
 はじめに
 1.華人ネットワーク組織・中華総商会が持つ2つの橋渡し機能
 2.中華総商会の活動と一帯一路における役割
 3.世界華商大会が一帯一路で果たす役割
 おわりに

第Ⅲ部 一帯一路沿線国における国内問題化

第11章 タ  イ──東部経済回廊とタイ華人ビジネス階級[ニミッド・アン 廣野美和 監訳]
 はじめに
 1.分析枠組み
 2.タイ華人ビジネス階級の歴史的状況
 3.CPグループの興隆とその政治的影響力
 4.一帯一路構想,東部経済回廊,そしてCPグループ
 5.タイにおける支配階級エリートと中国に対する昨今の政治的反発
 おわりに

第12章 インドネシア──ジャカルタ・バンドン高速鉄道と投資をめぐる合意政治[トリシア・ウィジャヤ 廣野美和 監訳]
 はじめに
 1.一帯一路,社会的紛争理論,およびスケールの政治
 2.既存の制度的取り決め──インドネシア中国高速鉄道会社
 3.対立と妥協のスケール変更──社会的勢力としての地方政府および資本派閥
 4.反対勢力の弱体化および対立の許容範囲の設定
 おわりに

第13章 ミャンマー──中国・ミャンマー経済回廊と国民民主連盟政権の意図[ルイン・チョウ・ラッ 廣野美和 監訳]
 はじめに
 1.先行研究の概観
 2.概念的枠組み
 3.国内政治におけるNLD政権の政策優先事項と挑戦的課題
 4.中国要因と中国・ミャンマー経済回廊の役割
 おわりに

第14章 パキスタン──中国・パキスタン経済回廊と国内政治[フィリポ・ボニ 廣野美和 監訳]
 はじめに
 1.パキスタンにおける2018年の総選挙とCPEC
 2.リーダーシップにおける変化が意味するもの
 3.CPECと文民──軍部との関係性
 おわりに

第15章 ウズベキスタン──脱大国主義のシルクロードとエネルギーおよび輸送インフラ整備戦略[ダダバエフ・ティムール,ドジャリロワ・ニゴラ]
 はじめに
 1.国家統制経済からインフラ発展指向型国家へ
 2.ウズベキスタンのインフラ整備戦略の規範的要素
 3.エネルギーおよび輸送インフラの地政学
 4.ロシア,中国,韓国,および日本とのインフラと投資に関するロードマップ合意
 5.協力体制のロードマップによるエネルギーのインフラ整備
 6.輸送インフラ建設
 おわりに

第16章 中  東──一帯一路構想がもたらす勝者と敗者[ミーナ・タドルス・ミラード・タドルス 廣野美和 監訳]
 はじめに
 1.一帯一路構想と中東──相互利益
 2.勝者と敗者の定義
 3.3つの対立的国家関係と一帯一路構想
 おわりに

終章 中国アクターのグローバル化と一帯一路の国内問題化──日本への示唆[廣野美和]
 1.一帯一路構想のグローバル展開の様相
 2.一帯一路沿線国における国内問題化
 3.グローバル・ガバナンスと国内ガバナンスへの意味合い
 4.日本にとって一帯一路とは

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 著者よりご恵投いただきました。洪門のような歴史のある秘密結社から地下宗教、そして米大統領選でフェイクニュースを世界にまき散らした郭文貴の新中国聨邦まで、「表」にはなかなか出てこない集団が現代中国の様々な出来事とどのようにつながっているのか。安田さんならではの情報豊富で刺激的なルポルタージュです。

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digital.asahi.com


 朝日新聞の「(耕論)国に不信?アプリ不振 新型コロナ」という記事でインタビュー記事が掲載されました。インタビューされたときは日本と中国における感染対策における監視やプライバシー保護の「構え」について一般的な話をしたつもりで、政府の接触確認アプリ「COCOA(ココア)」のことは特に意識していなかったのですが、先日のココアの通知漏れの問題が明るみに出たので、そこに焦点をあてた構成になったようです。

 なお、私のインタビュー中に「世界を「生存」と「自由」のどちらを重視するかで分類した調査によると、西欧や英米は「自由」を重視するグループになります」とありますが、この「調査」とは、現在Wave 7が公開されているWorld Value Survey(世界価値観調査)のことを指します。これは80カ国、1国あたり1000人から5000人に約300の質問を含むアンケートによって、世界の異なる国の人々の社会文化的、道徳的、宗教的、政治的価値観を分析しようとするプロジェクトです。

www.worldvaluessurvey.org
 
ja.wikipedia.org

「西欧や英米は「自由」を重視するグループになります」という記述の背景は、このWorld Value Surveyを元にいくつかの変数を二次元の変数(“伝統的-世俗的・合理的” と “生存-自己表現”)に圧縮し、世界の国々を特定の文化的な地方に分類した「イングルハート-ヴェルツェル図」に基づいたグループ分けです。ここで、伝統的な価値観は、宗教の重要性、親子の絆、権威への敬意、伝統的な家族の価値観を強調したもの、生存的価値観は、経済的・物理的な安全性を重視したもので、比較的民族中心的な見通しおよび信頼と低い寛容性とリンクしています。

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 この図ではProtestant Europe、English-Speakingのグループが右上に位置しており、もっとも世俗的価値観、自己表現を重視するグループになっています。また、中央上に位置しているのが日本を含むConfusianのグループで、「東アジア諸国は「生存」を優先する傾向が強く、台湾、ベトナム、韓国も含まれます」「日本人の価値観はどうなのでしょうか? 「生存」を重視する東アジアグループに入るものの、その中においては比較的「自由」を重視するという立ち位置です」という記述はこれを基にしたものです。

 もちろん、これだけで各国のコロナ対策への「構え」を説明できるものではありませんが、何らかの補助線にはなるのではないでしょうか。

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www.webdoku.jp

 著者の吉川浩満さんよりご恵投いただきました。読書の達人であるアラフィフおじさん二人が様々な人文書を深くわかりやすく解説する書評対談シリーズの書籍化です。先日紹介した『闇の自己啓発』といろいろな意味で好対照な企画だと思いますので、相互に書評しあうなどというのも面白いのではないのでしょうか。


str.toyokeizai.net

 版元よりご恵投いただきました。コロナ禍のせいで中国の最新テクノロジー情報にすっかり疎くなってしまったので、キャッチアップするためにありがたい1冊です。