梶ピエールのブログ

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  2月3日発売の、『週刊東洋経済』2月8日号のコラム「中国動態」に寄稿しました。今回は、先日北京の自宅で公安当局によって拘束された、中央民族大学副教授で、ウイグル人漢人の交流を目指したウェブサイト「ウイグル・オンライン(現在閉鎖中)」の主催者としても知られるイリハム・トフティ氏の言論活動について書いています。
 イリハム氏の拘束については日本でも様々なメディアが伝えており、その多くは「習近平政権による少数民族ウイグル人に対する抑圧的姿勢」の現れ、というスタンスで報道しているように思えます。もちろんそういった側面があることは否定できません。が、僕自身はそれよりも、イリハム氏が「ウイグル・オンライン」で展開してきた言論活動において、現行の中国の体制と憲法の枠組みを尊重し、憲法や法律で保障されているはずの言論や宗教活動の自由を訴える姿勢を明確にしていたことを重視したいと思います。つまり、自らの言論活動が「違法」なものとならないよう細心の注意を払っていたイリハム氏が、報道で伝えられるように「国家分裂」を企てたとして罪に問われるようなことがあれば、それは少数民族だけにとどまらず、広く中国国内で言論活動を行う知識人に降りかかってくる問題になるはずです。中国の民族問題の専門家でも何でもない僕があえてコラムでこの問題を取り上げた理由は、この一点に尽きます。以下、拙コラムより。

 イリハム氏は、ウェブサイト「ウイグル・オンライン」(2月1日現在閉鎖中)の運営を通じて新疆における民族問題の深刻さを訴え、またウイグル人漢人相互の意見交流に努めてきた。民族問題に関する彼のスタンスは、あくまでも現体制の枠組みの中で、憲法や民族政策の基本法「民族区域自治法」に示された中国公民としての権利の保障を訴える、極めて穏健なものであった。

 09年のケースでもそうだったが、彼の拘束に対して真っ先に抗議の声を上げたのは国内のリベラル知識人層であり、そのほとんどは漢人であった。このことは、中国社会にとどまりつつ、そこに存在する「マイノリティ問題」として、その理性的解決を訴える彼の姿勢が、「環球時報」のいう「分裂主義」とはむしろ正反対の立場にあることを示している。

 こういったイリハム氏の「ウイグル・オンライン」における活動がどのような背景と思想に支えられたものだったか、という点については、sinpenzakkiさんのブログ「思いつくまま」に日本語訳が掲載された一連の記事が詳しいので、おすすめしておきます。また、中国国内のリベラル派の知識人を中心とした即時釈放を求める署名呼びかけや、アムネスティの緊急アクションなど国際的な抗議の声も広がりつつあります。

イリハム・トフティ:私の理想と選んだ道(1〜4)
http://sinpenzakki.blogspot.jp/2014/01/blog-post_20.html?m=1
http://sinpenzakki.blogspot.jp/2014/01/blog-post_21.html?m=1
http://sinpenzakki.blogspot.jp/2014/01/blog-post_22.html?m=1
http://sinpenzakki.blogspot.jp/2014/01/blog-post_23.html?m=1

イリハム・トフティ:私は中国政府に対し正義を要求したこと以外に罪はない!
http://sinpenzakki.blogspot.jp/2014/02/blog-post.html

イリハム・トフティ氏の即時釈放を求める署名呼びかけ
http://sinpenzakki.blogspot.jp/2014/01/blog-post_24.html?m=1

イリハム・トフティ拘束に関するアムネスティ・インターナショナルの緊急アクション
http://www.amnesty.or.jp/get-involved/ua/ua/2014ua018.html