梶ピエールのブログ

はてなダイアリー「梶ピエールの備忘録。」より移行しました。

確かにバラマキですが、それが何か?

 春節明けの中国が各地ですごいことになっているらしい。産経新聞の報道より。

【上海=河崎真澄】定額給付金問題で揺れる日本を尻目に、中国浙江省景勝地として知られる杭州市は、国内旅行客の呼び込みのために「消費券」の配布を発表するなど、あの手この手の給付金作戦を展開している。
 杭州市は13日、総額約800万元(約1億700万円)分の消費券を近く、上海市内のショッピングセンターなどで通行人に無料配布する異例の作戦を明らかにした。杭州市内の飲食店や商店、観光地などで使用できる100元(約1340円)分のクーポンだ。
 杭州市は上海市内から高速道路で2時間ほどの距離にあり、中間層の多い上海から観光客を招き寄せる“呼び水”にする。上海以外でも江蘇省の都市部でクーポンのばらまきを検討している。
 さらに杭州市では、市職員幹部を対象に給与の5〜10%を消費券で支給する構想や、市職員が語学などの能力を伸ばすための「トレーニング券」、子弟の教育向けの「教育券」など数々のアイデアが浮上している。ただ、これらのクーポンは市内限定で使用期限もあることから、インターネット掲示板では「消費の強制だ」などと反発する声もある。
 中国青年報によると、杭州市はすでに先月、退職者や障害者、貧困家庭向けに1人あたり200元、一般の小中学生向けに同100元分の消費券を配った。対象は約76万人で、総額は約1億元分に達するという。消費期限は4月末までだが、すでに50%ほど使われており、順調に内需振興効果を生んでいるという。

早速「消費券」でぐぐってみると、出てくるわ出てくるわ。

成都
http://finance.ifeng.com/money/wealth/story/20090206/353967.shtml

杭州
http://www.china.com.cn/v/news/hot/2009-02/13/content_17274335.htm

寧波市
http://news.cnnb.com.cn/system/2009/02/13/005989268.shtml

深セン
http://www.21cbh.com/Content.asp?NewsId=107877

湖南省(旅行券)
http://www.xinhuanet.com/chinanews/2009-02/12/content_15676379.htm

長沙市
http://finance.ifeng.com/money/wealth/consume/20090212/367349.shtml

重慶市
http://pl.cqnews.net/sz/200902/t20090211_2953878.htm

済南市
http://www.dzwww.com/shandong/sdnews/200902/t20090213_4272464.htm

 たぶんこれはほんの一部で、財政に多少なりとも余裕のある地域は争って追随することだろう。
 成都のケースでは、春節前に37.91万人の市民に春節期間中にだけ使える100元(≒1400円)の消費券(こんな感じのやつ)を配ったという。ざっと観たところ他の市の試みも大体似たようなもので、日本でも一部で議論されている地方自治体がスタンプマネーを発行するというアイディアに近いように思える。ただし、「消費券」というからにはそれで納税などはできないようだし、シニョリッジをどう処理しているのかなど詳しいこともよくわからない。またおそらく各地とも一回限りの政策というわけではなく、これから状況をみて第二弾、第三弾の給付が行われるのだろう。
 ただ、次のことははっきりといえるだろう。昨年末から話題になっている「家電下郷」(農民が家電を購入すると補助金を出す政策)もそうだが、中国の今回の政策の特徴は、まず第一に公平性とかスマートさとかは二の次でとにかく実効性のある需要刺激策をとろうという姿勢が明確なこと、第二に、政策の実行に当たって中央政府よりも地方政府の主体性が目立つということである。台湾やシンガポールでもさっさと給付金政策を実行に移したようだし、この辺の迅速さは中華圏の特徴かもしれない。言うだけ野暮かもしれないが、われらが為政者たちも、ほんの少しでいいからこの行動力を見習ってもらいたいのだが。