梶ピエールのブログ

はてなダイアリー「梶ピエールの備忘録。」より移行しました。

映画

アナーキー・イン・ザ・PRC

先日、梅田の駅ビルに出来た映画館で、姜文監督の『さらば復讐の狼たちよ』を観た。評判に違わず、娯楽作品として完成度が高いだけでなく、今の中国を考えるにあたって格好の題材を提供してくれる傑作だと思う。この作品は特にリベラルな知識人層から絶賛さ…

淡島千景さんのご冥福をお祈りします

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120216/t10013061861000.html より。 映画「夫婦善哉」など多くの名作に出演して戦後の日本映画の黄金期を支え、ドラマや舞台でも長年活躍を続けた女優の淡島千景さんが、16日午前、すい臓がんのため東京都内の病院で亡…

神話的暴力と神的暴力、あるいは「動物」たちの反乱

少し前の、稲葉振一郎氏のエントリより。 少し話は変わるが、人(認識・行為の主体)を殺すということは、ある意味で(すなわちその人にとっての)世界を終わらせるということであり、その意味で人を殺すという営みは神的である。レヴィナスが「殺人は不可能…

『海角七号』を観たゼ!

先日、台湾で空前のヒットを記録した映画『海角七号』を梅田の映画館で観た。 ストーリーや背景に関しては、トゥルバドゥールさんのブログ記事を参照。 この映画を表すのにぴったりくるキーワードは、「イケてない」これだろう。まず、エドワード・ヤン仕込…

映画監督と公定ナショナリズム

http://blog.goo.ne.jp/dashu_2005/e/655ba95d302bcd73d0cdcc4b858889f1より。 陸川がパームスプリングス国際映画祭をボイコットしたというニュースを見ました。 この映画祭で『The Sun Behind the Clouds』が上映されることに対する抗議だそうです。昨年の…

景気回復を名作に学べ―映画編―

『大番』四部作一挙上映 だそうです。アテネ・フランスで上映なのは獅子文六つながりでしょうか。昭和恐慌前後の日本経済に関心のある方は、第一部・第二部だけでもご覧になっておくべきかと。

欧米人の眼、中国人の精神

少し前に、世界ウイグル会議のラビア・カーディル議長のドキュメンタリーの上映に抗議して、メルボルン国際映画祭に招待されていた賈樟柯(ジャ・ジャンクー)ら数名の中国人映画監督が出席を拒否する事件があった。http://dianying.at.webry.info/200908/ar…

『四川のうた』

公式サイトはこちら ご存知のように神戸市で新型インフルエンザの感染例が出たため、一部のキャンパスが神戸市中央区にあるわが大学も来週いっぱい休校となった。お気楽な大学教師といえども一応計画を立てて教育と研究その他に仕事を振り分けているので、突…

知らぬは恥―不況脱出を名作に学べ―

昭和三十二年から翌三十三年にかけて制作された、千葉泰樹監督の『大番』四部作は、昭和の流行作家、獅子文六による経済小説の草分けともいうべき小説を原作とし、日本経済の動向について臨場感あふれる描写娯楽映画である。当時は「知らぬは恥」とまで言わ…

『スラムドッグ$ミリオネラ』

良質のラブ・サスペンスに、現代インド社会の問題点が漏れなくトッピングされた快作。社会的背景については下のブログ記事が詳しい。 http://movie-sakura.cocolog-nifty.com/blog/2009/04/post-debf.html この記事を含め、この映画についてはすでに優れた批…

最近のお仕事

淡島千景―女優というプリズム作者: 淡島千景,志村三代子,御園生涼子,鷲谷花,坂尻昌平出版社/メーカー: 青弓社発売日: 2009/04/01メディア: 単行本 クリック: 29回この商品を含むブログ (36件) を見る 実は実物がまだ手元にないのですが、そろそろ店頭にも並…

『盲山』

この作品は、先月中国に行ったときにDVDではなくてVCDを書店で買ってきたものである。このことからも分かるように、この作品は中国国内で上映された、れっきとした当局の検閲済みの作品である。しかしその衝撃度は上映禁止になった作品に勝るとも劣らない。…

禁じられた映画たち

あまり脈絡もなく、春休みにDVDで観た中国映画を何本か紹介。 この作品はセックス描写がカットされた上で国内上映が一旦は許可されたのだが、ノーカット版の海賊版が出回ったのはけしからん、というよく分からない理由で結局上映禁止になったもの。当時の事…

『靖国 YASUKUNI』について

ふるまいよしこさんによる監督李纓(リー・イン)氏の紹介 http://wanzee.seesaa.net/article/91954227.html このような問題について、少なくともネット上での発言のレベルでは「表現の自由への弾圧を許すな」といった形式的な告発を行うよりも、「この作品…

藤井仁子編『入門・現代ハリウッド映画講義』

入門・現代ハリウッド映画講義作者: 藤井仁子出版社/メーカー: 人文書院発売日: 2008/03/01メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 113回この商品を含むブログ (21件) を見る 少し前にご寄贈いただきました。ご紹介が遅れてすみません。このブログにも何度かコ…

『馬背上的法庭』

北京で買ってきた映画『馬背上的法庭』のDVDを(PAL方式なので)パソコンで観た。 ストーリーの説明はこちらにある通りで、「馬上法廷」というよりまさに「巡回裁判所」というほうがぴったりくる。ただ車が通れないような山間の村なので、「国徴(中華人民共…

鉄西区

というわけで、新開地にある神戸アートビレッジセンターまで『鉄西区』第一部・第二部を見に行ってきたですよ。昨年の山形国際ドキュメンタリー映画際以来あちこちで上映会が行われているようで、観た感想をブログなどに書いている人もたくさんいるようなの…

『ラスト、コーション』をめぐって。

http://sun-bin.blogspot.com/2008/01/lust-caution-ii-east-vs-west.html There is a very significant difference in the understanding of WWII. The West seems to have never really included the Sino-Japanese War pre-1941 as part of WWII. As a re…

山形国際ドキュメンタリー映画際上映作品

神戸アートヴィレッジセンターで、山形国際ドキュメンタリー映画際でグランプリを獲得した王兵監督のドキュメンタリー作品二本が上映されるようです。 「鉄西区」(中国/2003/中国語/カラー/ビデオ/545分)監督:王兵 第1部:工場 240分/第2部:街 175分/…

「君の涙 ドナウに流れ ハンガリー1956」

公式サイト この映画は、歴史的事件に対する関心を喚起するという点において確かによくできている。だからこそ僕も映画に触発されてこんな文章をブログに書いているのだ。しかしそれは「市民に発砲する戦車」とか「目の前で撃ち殺される友人」とか「卑劣で憎…

『水没の前に』

いや、噂にたがわず大変素晴らしい作品でした。 三峡ダム建設に伴う立ち退きというと数年前にNHKスペシャルでも一度取り上げられていたのだけど、その番組ではカメラを向けられた立ち退き家族は「国の政策なので喜んで従います」みたいなことしか語っていな…

中国ドキュメンタリー映画上映会のお知らせ

『長江哀歌』を観た後どうしても『水没の前に』を観ておかねば、という気になったのですが、待っていても観られそうにないので結局自分で企画することにしました。 教室なので座り心地は(あまり)よくないですが、無料ですのでお近くの方はどうぞ。日時: 1…

クレージー・ストーン

知る人ぞ知る、昨年中国全土で大ヒットした劇映画。一応香港版のDVDを買って観たことは観たのだが、台詞が重慶訛りでほとんど聞き取れず、また寝る前だったので字幕をしっかり追う気力もなく、ということで半分も理解できない体たらくだったので、このた…

『長江哀歌』

今日から大阪でも公開された映画『長江哀歌』を見てきた。賈樟柯は人物描写がそれほどうまくない監督だと思うのだが、この映画ではその点が全く気にならないので、まあ「題材の勝利」ということなんでしょう。あとパンフレットがすごく充実しているので絶対…

キムチを売る女

http://www.kaf-s.com/lineup/kimchi/ この映画は去年バークレーのPFAでも公開されていて、話題になっていることは知っていたのだが、そのときは観そこねた。で、このたび韓国アートフィルムショーケースの中の1作として十三の第七藝術劇場で公開されたので…

ブラインドサイト

http://www.blindsight-movie.com/ 観たのはもうずいぶん前だし公開もほとんどのところで終わっているかもしれないけど、書きかけで放ったらかしにしていたもので。

ブラインドサイト

http://www.blindsight-movie.com/ チベットを舞台にした、いかにも欧米人が好きそうな、ヒューマニズムにあふれる映画というのは本来あまり好きじゃないのだが・・この映画には正直参りました。今までチベット・ヒマラヤを舞台にした映画を10本以上観てきた…

『墨攻』

うーん、どうもダメっぽいですね。脚本家とのトラブルも起きているみたい。 http://dianying.at.webry.info/200702/article_11.html http://reflation.bblog.jp/entry/354366/ http://homepage.mac.com/biogon_21/iblog/B1604743443/C1889867052/E2007020822…

農家の経済学・歴史編:「嫁は春に貰え!」

大分前に書いた成瀬巳喜男の『鰯雲』についてのエントリ(id:kaikaji:20060214#p2)に若手の映画研究者の方からトラックバックを頂いたが、そこで紹介されている「春嫁と秋嫁」の話はすごい。

ようこそ、羊さま

「中国映画の全貌2006」という特集をやっているので久しぶりに九条のシネ・ヌーヴォを訪れる。あいかわらず場所わかりにくいなあ。 http://www.cinenouveau.com/china2006_hp/china2006.html さて表題作は一言で言うと(地方)政府による、「農家の実態を無視…