梶ピエールのブログ

はてなダイアリー「梶ピエールの備忘録。」より移行しました。

『靖国 YASUKUNI』について

 ふるまいよしこさんによる監督李纓(リー・イン)氏の紹介
http://wanzee.seesaa.net/article/91954227.html

このような問題について、少なくともネット上での発言のレベルでは「表現の自由への弾圧を許すな」といった形式的な告発を行うよりも、「この作品はこれこれこういう点が面白くて、一見の価値がありますよ」「監督は過去にこういう作品を撮っていて、活躍が期待されています」「この描写は物議をかもしそうですね」という作品自体に関する話題や情報を振りまいて「広く市民の関心を喚起する」方が、事態を好転させるのにはるかに有効なのではないだろうか。
 その結果作品自体への社会の「欲望」が高まり、商業的にもかなりいい線いけそうだ、という状況が作り出されば、多少の政治的リスクを犯してでも公開に踏み切る「企業家精神」にあふれた映画館は決して少なくはないはずだ。作品上映の「商業的なリスクの大きさ」が、映画館をして右翼の抗議・いやがらせに対しておよび腰にさせた、という側面も無視できないのではないだろうか。少なくとも僕はマスコミが報じるまでこんな映画が作られていたこと自体知らなかったし。

 僕は上記のふるまいさんの文章を見て,李纓監督の映画作りへの姿勢に非常に興味を持ったので、関西でこの作品が公開されれば必ず見に行くだろう。もちろんそれは作品が面白そうで見終わった後何か得られそうだからで、べつに表現の自由を守りたいからとか日本の社会のおかしさに抗議したいからとかではない。その意味で問題が表面化して早々に公開を表明した大阪十三の第七芸術劇場(これまでもよく訪れてきた映画館のひとつである)の「映画館経営者としての先見性」には心から拍手を送っておきたい。