梶ピエールのブログ

はてなダイアリー「梶ピエールの備忘録。」より移行しました。

2010-01-01から1年間の記事一覧

世間は元の対ドルレートの動向に一喜一憂していますが

個人的にはそれよりもむしろ、中国インターバンク市場金利が5月の終わりくらいからじわっと上がってきているのが気になるところ。すでにオーバーナイト金利でさえ預金金利(年率2.25%)を上回っている。いまのところ為替政策の変更とどのように連動しているの…

これからの「人民元」の話をしよう

どうでもいいけど、このタイトル、どんな話題でも使えそうでいいなあ。 さて、すっかり「旬」となった感のあるこの話題ですが、私としては3月段階で書いたことをほとんど修正する必要を感じておりません。人民元切り上げ問題と米中経済の統合度クルーグマンv…

追記

こちらの記事もぜひご覧ください。中国人派遣労働者「どうせプロレタリアートだから革命起こそうぜ」(「大陸浪人のススメ 〜迷宮旅社別館〜」)

「内巻化(involution)」する第二世代の農民工

先日、仕事で上海に出かけた際に、劉伝江ほか著『中国第二代農民工研究』(山東人民出版会)という本を見かけて購入した。いわゆる「第二世代の農民工」の意識や行動に関する、大規模なアンケート調査に基づいた包括的な研究書で、とても有益な内容だったの…

これからは「正義」の話をしよう

さて、今日び「正義」を語るといえばなんといってもこの本ですが。これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学作者: マイケル・サンデル,Michael J. Sandel,鬼澤忍出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2010/05/22メディア: 単行本購入: 483人…

産経新聞への抗議文

例の産経新聞に掲載された人種差別書評について、2週間前に以下のようなメールを大阪と東京の読者サービス室に送ったのですが、残念ながら何の返事ももらえませんでした。せっかくなので、以下に抗議文の内容を公開しておくことにします。問題の書評は現在も…

ユーロの足枷、あるいは対岸のギリシャ

ギリシャの問題についてはすでにいろいろなことが語られていて、とてもフォローしている余裕はない。ここでは、一点だけ気になった点を。 スティグリッツがproject-syndicateで、ドイツが経常収支の黒字を溜め込んで域内の需要拡大に貢献していないことが今…

追記

どうも誤解している人も中にはいるようなのですが、上のエントリを通じて僕が本当に言いたかったことというのは、1.ヘクシャー・オリーン理論ってやっぱり偉大だよね 2.おかしくなった経済を立て直すのに、雇用の流動化ではなく、金融緩和で対応する余地…

マオの時代のプレカリアート

少し前だが、現在の中国社会における「臨時工」という存在の位置づけ、そして、例の餃子事件を始め、最近の中国においては何か社会的事件が起きるたびに「臨時工のやったこと」で片付けられてしまう風潮について、ふるまいよしこさんが次のようなとても興味…

新聞倫理綱領に違反する産経西尾書評

下の記事のAcefaceさん(最近DX化したらしい)さんのコメント:『例の西尾書評は日本新聞協会の倫理綱領に違反しているのでは、と思うのですが。http://www.pressnet.or.jp/outline/ethics/』 新聞倫理綱領 21世紀を迎え、日本新聞協会の加盟社はあらためて…

サヨウナラ、産経新聞。

産経新聞は長らく僕の愛読紙の一つだった。このブログでも検索してもらえれば過去記事のなかに産経新聞からの引用が結構多いことがわかるだろう。といっても必ずしもその主張に共感していたわけではない。もともと僕の実家は祖母とその姉妹も同じ敷地内に同…

いただきもの

折原浩『マックス・ヴェーバーとアジア−比較歴史社会学序説−』 相沢 伸広著 『華人と国家−インドネシアの「チナ問題」−』 bk1から「読んで感想文を書かないか」ということで送っていただきました(ですのでリンクもbk1様に貼ってあります)。しかしど…

銅鑼衣紋氏との対話

先日亡くなられたドラエモン=銅鑼衣紋=岡田靖氏からは、このブログにも過去に二回ほどコメントをいただいたことがある。 僕自身は、岡田靖氏がドラエモン=銅鑼衣紋 であるということを訃報があるまでまったく知らなかったくらいで、彼の発言をそれほど熱…

春のNHK

やはり自分でいったんブログにまとめる作業をしないと番組チェックがすごく甘くなるということがよくわかったので。twitterに流して「作業」した気になるな!(自戒)2010年4月18日(日) 午後9時00分〜10時13分 プロジェクトJAPANシリーズ 日本と朝鮮半島 第1…

Book3が出る前に『1Q84』を論じる(下)

承前。ようやくおしまいです。ああすっきりした。

異動のお知らせ

4月より所属が変わりました。梶谷に御用のある方は、とりあえず下記住所あてにご連絡ください(神戸学院大のメールアドレスは4月いっぱいまで使えるようですが、その後失効します)。 657−8501 神戸市灘区六甲台町2−1 神戸大学大学院経済学研究科 梶谷研究室…

Book3が出る前に『1Q84』を論じる(上)

今年初めのエントリ「2010年に『1Q84』を読む」の続きです。まあ、愚人節にふさわしいホラ話ということで。

クルーグマンvs. 中国人エコノミスト(+オレ)

前回のエントリの続きです。 クルーグマンの人民元切り上げ論について、中国人エコノミストの反発が相次いでいる。 例えば『財新網』に掲載された黄益平の記事では、Menzie Chinnによる実証研究などにも言及しながら、確かに以前は購買力平価を基準にして、…

人民元切り上げ問題と米中経済の統合度

実はこの4月から勤め先が代わることもあって、なんやかんやと慌ただしいのですが、たまには中国経済の動きもまとめておきたいと思います。 さて、先日閉幕した中国の今年の全人代(全国人民代表大会)は、このブログでも紹介してきた「地方融資プラットフォ…

いただきもの

京劇俳優の二十世紀作者: 章詒和,平林宣和,森平崇文,波多野眞矢,赤木夏子出版社/メーカー: 青弓社発売日: 2010/03/01メディア: 単行本 クリック: 4回この商品を含むブログ (4件) を見る たぶん昨年淡島千景さんの本に書かせていただいたご縁でだと思いますが…

いただきもの

体制移行の政治経済学 -なぜ社会主義国は資本主義に向かって脱走するのか-作者: 中兼和津次出版社/メーカー: 名古屋大学出版会発売日: 2010/02/24メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 10回この商品を含むブログ (3件) を見る どうもありがとうございます。…

『虹色のトロツキー』のその後

2008年3月のチベット騒乱以降、日本でも中国の少数民族問題を論じた書物が書店で数多くみられるようになった。本書も、その流れの中での出版と位置付けることも、あるいは可能かもしれない。それならばネット上などでもう少し話題になってもよさそうなものだ…

いただきもの

日本の失われた20年 デフレを超える経済政策に向けて作者: 片岡剛士出版社/メーカー: 藤原書店発売日: 2010/02/25メディア: 単行本購入: 5人 クリック: 217回この商品を含むブログ (35件) を見る 大学にいったら献本いただいてました。どうもありがとうござ…

短期金融市場に異変起こらず

その後のフォロー。翌日物 1週間物 2週間物 というわけで一時的に金利が上がったのはやはり春節前の駆け込み的資金需要が原因だったみたいです。

地方発バブルの構造

http://www.nikkei.co.jp/china/news/index.aspx?n=ASGM1400N%2014022010より 【北京=高橋哲史】中国の地方企業による起債が急増している。2009年の人民元建て債券の発行額は2223億元(約3兆円)と前年の3倍強に膨らんだ。地方政府が公共事業などを実施す…

中国短期金融市場に異変が?!

上海インターバンク市場金利(SHIBOR)のデータより。オーバーナイト 1週間物 2週間物 1カ月物 春節前で資金需要が一時的に上昇したという効果も考えられないではないが、これは明らかに2月12日に発表された預金準備率の0.5%引き上げの効果がモロに出たものと…

チョコレートの経済学

よい子のみなさん、2月14日は何の日か知っていますか?

劉暁波氏の判決確定

毎日新聞の報道より。 【北京・浦松丈二】中国共産党の一党独裁を批判する「08憲章」を起草して国家政権転覆扇動罪に問われた反体制作家、劉暁波被告(54)の控訴審判決で、北京市高級人民法院(高裁)は11日、懲役11年、政治権利はく奪2年の1審判…

ハイチとIMF

W.イースタリー『傲慢な援助(The White Man's Burden)』170〜172ページより。 次のトリビア的質問に答えてほしい。過去50年間でIMFから最も多くのスタンドバイ融資*1を受けたのはどの国か?答はハイチであり、22本の融資を受けた。しかもハイチの国というよ…

発展途上国はなぜそんなに「法の支配」に抵抗するのか?

・・という題名の論文をバリー・ワインガストが書いているのを偶然見つけたんですが、例の「民主主義はアフリカ経済を殺すか」という話と関係あるかなという気がしたので、とりあえずアブストラクトをメモ。 The institutional technologies needed to susta…