梶ピエールのブログ

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産経新聞への抗議文

  例の産経新聞に掲載された人種差別書評について、2週間前に以下のようなメールを大阪と東京の読者サービス室に送ったのですが、残念ながら何の返事ももらえませんでした。せっかくなので、以下に抗議文の内容を公開しておくことにします。問題の書評は現在もウェブサイトに堂々と掲載されています。他の抗議の電話とかFAXとかメールとかも、同じように一切無視されたのでしょうか。

前略

 突然このようなメールを送りし、失礼いたします。私は関西の大学で主に現代中国経済研究を専門にし、研究・教育活動に従事している者です。その立場から、貴社の報道姿勢に関して折り入ってお尋ねしたい点があり、こうしてご連絡を差し上げた次第です。

 4月25日付の貴紙書評欄に西尾幹二氏による河添恵子著『中国人の世界乗っ取り計画』の書評(以下、「西尾書評」)が掲載されました。その最後は以下のように締めくくられています。

「ウソでも百回、百カ所で先に言えば本当になる」が中国人の国際世論づくりだと本書は言う。既に在日中国系は80万人になり、この3年で5万人も増えている。有害有毒な蟻をこれ以上増やさず、排除することが日本の国家基本政策でなければならないことを本書は教えてくれている。

このような表現は、在日中国人を人間以下の「虫けら」として扱うものであり、明らかに人種差別にあたるものだと考えられます。また、「有害有毒な」中国人を「排除」せよ、という表現からは、この文章がそもそも暴力的な排外主義を助長する意図を持って書かれたものである、と判断せざるを得ません。

 また西尾書評は、貴社もその遵守をうたっておられる新聞倫理綱領(http://sankei.jp/company/co_writer.html)、特にその中の「人権の尊重」(新聞は人間の尊厳に最高の敬意を払い、個人の名誉を重んじプライバシーに配慮する。報道を誤ったときはすみやかに訂正し、正当な理由もなく相手の名誉を傷つけたと判断したときは、反論の機会を提供するなど、適切な措置を講じる。)および「品格と節度」(公共的、文化的使命を果たすべき新聞は、いつでも、どこでも、だれもが、等しく読めるものでなければならない。記事、広告とも表現には品格を保つことが必要である。)に明確に違反していると考えます。
 在日中国人を「有害有毒な蟻」扱いする記事が、人間の尊厳に対して全く敬意を払っておらず、また正当な理由もなく在日中国人の名誉を傷つけるものであり、また同時に、天下の公器たる新聞にふさわしい品格と節度を備えた表現などでないことは、火を見るより明らかであると考えられるからです。

 また、このような書評をそのままチェックもなしに掲載してしまう、貴社の人種差別および人権問題に対する姿勢にも、大きな疑問を感じざるを得ません。明らかに暴力的な排外主義を助長する意図を持って書かれた文章をそのまま掲載するということは、貴社自体がそのような暴力的な排外主義を助長する意図を持っている、と判断せざるを得ないからです。

 以上のような観点から、一読者として貴紙に以下の点を要求したいと思います。

1.西尾書評の内容、およびそこに含まれている人種差別、人権侵害にあたると考えられる表現についての、貴社としての見解をお聞かせください。

2.上記のように、明確に「新聞倫理綱領」の精神に違反していると考えられる西尾書評を潔く撤回し、およびこのような書評を掲載したことに対する謝罪の文面を紙面にて公表することを要求いたします。

 以上の点について、誠実なご回答をお待ちいたします。

 なお、いただいたご回答は(回答いただけなかった場合はそのことも含め)、インターネットおよびその他の媒体などを通じて公開させていただきますので、その旨をあらかじめご了承いただきますようお願いいたします。

草々