梶ピエールのブログ

はてなダイアリー「梶ピエールの備忘録。」より移行しました。

中国のGDP:40%も過大評価されていた?

http://afp.google.com/article/ALeqM5iAQ-cie6r6S__Wuw_oTsuunUZg5A

 タイトルははっきり言って「釣り」ですのでご注意ください。GDPといっても名目ベースの話ではなく購買力平価(PPP)ベースの話。各国の購買力平価ベースのGDP推計値は毎年世界銀行が発表しているが、例えば2005年には約12兆ドルのアメリカに対し中国の数字は約8.6兆ドルとなっており、アメリカを抜いて世界一の座に着くのも時間の問題といわれていた。しかしカーネギー国際平和基金エコノミストAlvert Keidelによると、この世銀による数字は大幅に過大評価されており、アジア開発銀行のチームが新たな方法を用いて推計した中国の2005年の購買力平価ベースのGDPは5兆ドル程度でしかないとのこと。それでも日本を抜いて世界二番目の規模であることは変わりないのだが。

 なぜこのような過大評価が生じたのかについてAPFの記事では触れていないのだが、可能性としては、購買力平価を計算する際の財バスケットの構成に問題があった、中国国内のインフレ率(恐らく公式データを使用)が過小評価されていた、などが考えられる。それにしても40%というのはちょっと「誤差」というレベルじゃないような・・・購買力平価のデータ自体の信頼性にも疑問がもたれそうだ。

 Keidelは、このような購買力平価ベースでのGDPの大規模な下方修正は、アメリカにおける「中国脅威論」および「元の過小評価による対中貿易赤字論」を弱める効果を持つだろう、と指摘している。しかし、もともとこれらの主張には経済学的基礎が希薄であり、もっぱら政治的な意図から行われていると思われるので、実際の影響は大したことはないのではないだろうか。