梶ピエールのブログ

はてなダイアリー「梶ピエールの備忘録。」より移行しました。

牛肉拉麺をめぐる闘い

 中国のポップカルチャーを研究している方のブログでつぎのような記述を見つけた。

ここしばらく、中国で話題になってるのが、牛肉拉麺です。牛肉出汁の胡椒のたっぷりきいた透明スープに、細めの延ばした麺のアレです。甘粛の省会・蘭州が本場で、中国全国何処でも、蘭州牛肉拉麺の看板を目にしないところはないほど、メジャーな小喫ですね。

それが、ここのところ、大論争になっています。といっても、話題の食品安全性問題ではありません(笑)。値段の問題です。

蘭州市内の牛肉拉麺が、肉・油などの価格高騰のあおりをくって、もともと2.5元くらいだったのが6月に5元くらいまで価格上昇、そこで蘭州市政府がおふれを出して、市内の牛肉拉麺の上限価格を一杯2.5元に設定しちゃった、ってことのようです。蘭州人にとって拉麺は特殊な意味を持ち、かつ低所得層を保護するために必要な政策なんだとか。

 こりゃ面白そうだと思って早速調べたら確かにいっぱい記事が書かれていて、捜狐では特集ページまで作られていた。で、一応だいたいの記事に目を通してみたんだけど・・

 ・・く、くだらん。もうすこし中央と地方の対立にからんだ深い背景とかがあるかと思ったんだが、何もない。たとえば食糧価格が全般的に高騰している時に、うどんは香川県民の命なのでこれから県内のうどんの価格は現在の半額で固定します、と香川県知事が宣言するようなもの。多分そのうち誰も価格統制なんて守らなくなって自然消滅するだろう。以前、広州市の市長なんかが不動産価格の高騰を批判して庶民の喝采を浴びたことがあるのだが、不動産価格は引き下げられない(というか自分達もそれで甘い汁を吸っている)ので、いかにも立場弱そうな拉麺屋に目をつけて庶民の歓心を買おうとしたというところだろう。

 念のために言っておくといくら拉麺が庶民の心の食べ物だからといって政府が補助金を出して値段を下げるのも政策としては望ましくない。拉麺に対する需要が増えすぎてますます原材料の高騰を招くからだ。物価水準は中央で管理すべきで、地方政府はその件では本来お呼びでないはずだ。まあ、その常識が通用しないのが中国なのだけど。それにしても蘭州市、役人がこんなレベルでだいじょうぶかぁ?ニュースを聞きながら中央の官僚は内心「だめだこりゃ」とつぶやいていることであろう。
 でもまあどうせ長続きはしないだろうし、経済学的にはくだらなくてもネタとしてはそこそこ面白いような気もするので、まあいいか(いいのか?)。