梶ピエールのブログ

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いただきもの

 先日のエントリで取り上げた「重慶モデル」や烏坎村のケースなどが典型的ですが、中国の政治経済問題を理解するのに土地問題は避けて通れない、というのは衆目の一致するところではないかと思います。ただ、公有制を維持しながら使用権が売買される、農村と都市で制度が全く異なる、など複雑な制度的背景をもつ中国の土地問題は、わかりやすい解説書が不足していることもあって一般読者にはかなり敷居の高いものなののではないかと思います。
 本書は、中国の土地問題を中央−地方関係から見るという視点でまとめられた学術書ですが、90年代以降、土地開発に伴う収入が地方政府にとって重要さを増していった経緯を税制、政策決定過程の面から詳しく掘り下げており、この問題に関心を持つ一般読者にとっても資するところが大きいのではないかと思います。

 ちなみに、昨年出版された拙著『現代中国の財政金融システム』では、同様の問題を要素市場への政府介入を通じたレント獲得、という経済学的な観点から整理し、地方政府の土地問題への傾斜を1980年代の財政金融改革からの連続性から捉えようと試みています。本書と合わせて読まれれば、中国のホット・イシューたる土地問題の概要がほぼつかめるのではないかと思いますので、この機会に是非どうぞ。

現代中国の財政金融システム -グローバル化と中央-地方関係の経済学-

現代中国の財政金融システム -グローバル化と中央-地方関係の経済学-