
「壁と卵」の現代中国論: リスク社会化する超大国とどう向き合うか
- 作者: 梶谷懐
- 出版社/メーカー: 人文書院
- 発売日: 2011/10/14
- メディア: 単行本
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ようやく刊行できる運びとなりました。来月初旬には書店に並ぶのではないかと思います。
以下、人文書院ウェブサイトより。
内容説明
揺らぎ、ときに衝突する、中国の制度(=壁)と個人(=卵)。「中国」はひとつにまとまった、堅く大きなシステムではない。私たちは、それをどこまで分かっているだろうか。本書では、経済を中心に社会、歴史を横断し、多元的に変動する現代中国をリアルに、そして鮮やかに分析。気鋭の経済学者が、専門知のみならず幅広い知見と清新な視点を活かして論じる、左右のイデオロギー対立を超える、創見に満ちた現代中国(経済)論の誕生。
目次
第1章 自己実現的な制度と私たちの生活
「壁と卵」の視点から現代中国をみる/システムとしての「制度」
現代中国社会と歴史的制度/自己実現的な制度と中国産食品の安全性第2章 グローバルな正義と低賃金労働
農民工の自殺問題と相次ぐストライキ/
「搾取工場」へのボイコットは正当化されるか
「離脱・発言・忠誠」とボイコット運動/労働CSRをめぐる問題
新世代の農民工にみる労働者の意識変革第3章 赤い国のプレカリアート
都市の労働力不足と「ルイスの転換点」/労働者の待遇改善と農村問題
マオの時代のプレカリアート=臨時工/文革と臨時工問題第4章 中国とEUはどこが違うのか?――不動産バブルの政治経済学
不動産価格の高騰と蟻族の不満/社会主義体制下の土地公有制
単一の金融政策と独自の財政政策
「融資プラットフォーム」と地方政府の債務拡大/崩壊しそうでしない「バブル」第5章 米中の衝突は避けられないのか?――中国の台頭と人民元問題
「ワシントンコンセンサス」から「北京コンセンサス」へ?/TPPをめぐる論争
グローバル・インバランスと人民元問題/米国の金融政策に追随する中国
「だまし絵」のような米中関係第6章 歴史に学ぶ中国経済の論理
乖離する国家と社会/硬直的な財政と予算外資金/中国の近代化と貨幣流通
大恐慌から幣制改革へ/国家をすり抜ける「民間」第7章 分裂する「民主」と「ビジネス」
遅れてきた開発体制国家/天安門事件と趙紫陽/計画経済体制下のリベラリストたち
ラビア・カーディルと「市場の倫理」の挫折/「統治の倫理」を超えて第8章 これからの「人権」の話をしよう
二○一○年ノーベル平和賞の衝撃/自由権と社会権をめぐって
「社会問題」の解決と暴力/東アジアにおける専制と公共圏第9章 日本人の中国観を問いなおす――戦前・戦後・現在
戦後の日中関係を振り返る/右翼と左翼、そしてネオリベラリズム
「支那統一化論争」と尾崎秀実/現代日本人の中国観――三類型による理解第10章〈中国人〉の境界――民族問題を考える
民族間衝突をめぐって/〈中国人〉の境界/社会主義と民族自決の理念
戦後日本の左翼運動と民族主義/「告発の政治」を超えて第11章 村上春樹から現代中国を考える
「こちら側」の論理と「あちら側」の論理/重層化するシステムと中国社会
「例外状態」に生きる人々――檻の中のウイグル人
村上春樹と竹内好――近代化する社会との葛藤
村上作品における〈アジア〉へのまなざしあとがきに代えて――リスク社会化する中国とどう向き合うか