梶ピエールのブログ

はてなダイアリー「梶ピエールの備忘録。」より移行しました。

インドの児童労働のドキュメンタリー

またNHKのドキュメンタリーの話になって恐縮だが、正月2日に放映されてビデオに撮っていたインドの児童労働に関する番組『仲間たちが希望をくれた:インド働く子供たちの組合』を今日になって観た。これは昨年放送されて反響が大きかったものの再放送のようで、検索するといくつかのブログに感想を記されたものがヒットする。

 番組を見てまず驚いたのは、児童労働の現実そのものというより、現地のNGOがこういった働く子供たちに住居を提供したり、起業する資金を貸し出したりといった支援を積極的に行っていることだ。解説によると、90年代後半にはこういった児童労働に対する倫理的な批判から、インドの工業製品に対するボイコット運動が欧米で広く展開されたが、そのため仕事を失った子供たちがよりひどい貧困状況におかれてしまうという皮肉な事態を招いてしまった*1。そこで現在では、多くのNGOがこの番組のようにいわばセカンド・ベストの策として、むしろ子供たちの労働者としての権利を保護したり、起業して自立することを支援する方針に転換している、ということだ。反スウェットショップ運動とフェアトレードの対比でも感じたことだが、こういったグローバル化の負の側面に取り組むNGOや市民団体も、より市場友好的・現実主義的な流れと、より反市場的・原理主義的な流れとの間に大きく分かれつつあるのではないだろうか。

 あと、どの場面でも子供たちが大人と全く対等に話をしたり交渉しているのがとても印象的だった。児童労働自体がそれほど普遍的ではない、という事情を割り引いても、中国(漢族)ではまず考えられない光景である。この辺は文化の違いも大きいような気がした。

*1:http://d.hatena.ne.jp/kaikaji/20060531で紹介したバーダンの論説にも同様の話が紹介されている