- 作者: ポール・コリアー,甘糟智子
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2010/01/14
- メディア: 単行本
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出版社よりお送りいただきました。これは稲葉さんのお買いもの思案を見て買わなきゃ、と思っていたところなので大変うれしかったです、ありがとうございます。
- 作者: セルジュ・ミッシェル,ミッシェル・ブーレ,中平信也
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2009/12/19
- メディア: 単行本
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このコリアーの本は、ぜひ上の本と合わせて読まれるべきだろう。これは実にインフォーマティヴでためになる素晴らしい本である。ただしその邦題を除いては。『アフリカを食い荒らす中国』はミスリーディングもいいところの、まさに「俗情との結託」ともいうべき愚劣な邦題である。
原題"Chinafrique(中華的アフリカ)"は、"Francafrique(おフランスなアフリカ)"という言葉を容易に想像させる。フランスが旧植民地諸国に対して、その独立後もいかに政治・経済的に支配力を温存しようとしてきたか、そしてフランスがアフリカから奪ってたものに比較して、そこに残したものがいかに貧弱だったか、本書の著者たちは容赦なく指摘している。あきらかにいまアフリカで起きているさまざまな問題「原罪」を背負わなければならないのはフランスなど旧宗主国のほうであり、現在中国の進出がもたらしている(かのように見える)問題も、結局はその鏡に過ぎない。しかし、そのような自己批判的なニュアンスが、邦題からはまるっきり抜け落ちている。だいたい本書の内容はそのほとんどが「中国はただアフリカを食い荒らしているだけではない」ことに注意を向けるものなのだから、それにこういう題名をつけるのはほとんど詐欺行為といってもよい。
アフリカにおける「中国」の存在について考えたり語ったりするときには、それが実際に何を指しているのか、常に注意が必要である。本書の場合、それは多くの場合政府でも、企業でもなく、両者が分かちがたく融合した複合体を指している。確かに、アフリカにおける中国政府+資本の複合体は、その行動論理が「資源開発の利権追及」というあからさまなものであり、往々にして現地社会の事情に関しては無頓着なので、進出先で様々な軋轢を起こしている。メディアではとかくその軋轢ばかりが報道されがちだが、しかし一方で中国政府+資本の複合体は、これまでのアフリカに最も欠けたものー実際に経済発展というプロジェクトを起動させる実行力―をもたらしている。その結果、中国政府+資本の複合体は、おそらく、アフリカにとって「人権と民主主義」以外のすべてのものを与えてくれる可能性を持った存在になっている。そして、コリアーの本のタイトルのように「民主主義がアフリカ経済を殺す(こちらの邦題はむしろ内容をよくあらわしていると思う)」のであれば、一体そのことを誰が批判できようか?
この本が投げかけている問題は明らかにとても重要だが、なにしろ、アフリカに対する知識が貧弱すぎて上手く考えることができない。コリアーの本を読み終わってからまたゆっくり考えたい。