中国ではブロックされて見ることが叶わなかったkokさんのブログの記事より。
同じような“非民主主義国”でも、ロシアには、アンナ・ポリトコフスカヤというチェチェン問題を自らの命をかけて追及したジャーナリストがいる。彼女の暗殺が、ロシアの暗黒部分を西側に伝えた。このような人材のなさがまた、ウイグルとチベットには哀しいことである。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20091026/208026/?P=6吉田さん。ちょっとお聞きしますが、アンナ・ポリトコフスカヤはチェチェン人なのですか?違うでしょう。支配民族のロシア人です。比較するなら告発する漢族中国人のジャーナリストなり、知識人を言わなければならないのではないですか。あなたは知らないだけでしょうが漢族にも王力雄という人がいます。そして「中国を追われたウイグル人」を読んで御覧なさい。命をかけて中国の核実験被害を告発したアニワル・トフティをはじめとする何人もの「人材」がいます。
kokさんのおっしゃるとおりだと思います。
だが、より根深い問題は、結局のところ「反テロ」戦争の文脈や米中両大国の鞘当てといった「統治の論理」でしかラビア・カーディルという人の言動が受け止められないところにあるのだと思う。そういった日本のジャーナリズムの文脈では、彼女の自伝は、どうしても後半の獄中生活やアメリカへの亡命のくだりが注目されてしまうのかもしれない。だが、この本の本当に重要で面白い部分は彼女が改革開放の波に乗って財を成しながら、「誰もが平等に金儲けのチャンスが与えられる社会」を目指す、という形で民族のおかれた状況を改善していこうとする部分にある。
したがってこの自伝は本来、「現代中国における商人道とその挫折」といった副題をつけるべきものなのだ。ラビア・カーディルとは何よりもジェイン・ジェイコブズの解くところの「市場(商人)の倫理」を体現した人物に他ならないからだ(さらに言えばそんな根っからの「商売人」である彼女が政治的な抵抗運動のシンボルとならざるを得ないところにこそ、現代のウイグル人並びに中国の悲劇がある)。そのことを彼女の「自伝」から読みとり損ねている、という点において、日経ビジネスオンラインの記事のインタヴューアーは中国政府と同じ過ちを犯している、といえるのではないだろうか。
ジェイコブズによる「市場の倫理」(松尾匡『商人道ノススメ』より引用)
・暴力を締め出せ
・自発的に合意せよ
・正直たれ
・他人や外国人とも気安く協力せよ
・競争せよ
・契約尊重
・創意工夫の発揮
・新奇・発明を取り入れよ
・効率を高めよ
・快適と便利さの向上
・目的のために異説を唱えよ
・勤勉なれ
・節倹なれ
・楽観せよ
ウイグルの母 ラビア・カーディル自伝 中国に一番憎まれている女性
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