梶ピエールのブログ

はてなダイアリー「梶ピエールの備忘録。」より移行しました。

7月5日ウルムチでの騒乱に関して

 最初日本のメディアは新華社のニュースをそのままタレ流すだけでやはりダメだと思ったが、6日の報道ステーションはかなり時間を割いて双方の言い分を報道するというスタンスで、水谷尚子氏にも取材を行うなど、かなり頑張っていた。ただコメントが加藤千洋氏というのはあまり適任ではなかったと思うが。
 ・・とはいえやはりこの件についてはBBCなど英語圏の報道が背景の解説も含めて圧倒的に詳しい。それに引換え、「東洋のBBC」を目指しているはずのNHKは7時のニュースを見る限り広東省韶関での事件にも言及しないなど、かなりお粗末な時間の制約があったとしても不満の残る報道姿勢だった(9時のニュースではちゃんと報道していたようです)。
 少し前だが、グアンタナモに収用されていたウイグル人パラオに移送されたときも、日本ではほぼベタ記事扱いだったが、NYTが非常に詳しい報道を行っていた(これとかこれ)。日ごろからの取り組みと心構えの差が、こういうところに現れてくる、というべきだろう。

 さて、ご存知のように中国政府は世界ウイグル会議代表のラビア・カーディル氏を始め海外の「三股勢力(原理主義、独立派、国際テロ組織)」が今回の騒ぎを扇動したと表明している。
 世界ウイグル会議が6月26日に広東省韶関で生じた事件に対する抗議を呼びかけたのは事実だが、それが直接の原因となったという中国政府の主張にはどう考えても無理がある。そういった「遠隔操作」を意図して行えるだけの力が現在の在米ウイグル人組織にあるとは思えないし、そもそもそういう事態を防ぐために、中国政府は国内からのその手のサイトへのアクセスを厳重に禁じていたはずではなかったのか。

 明らかに今回直接の引き金となったのは韶関での事件の映像がネットで流れたことであり、それがなければ今回の事件は絶対に起こらなかったはずだ。その意味で、今後7月5日の事件の解明とは別に、韶関での事件の意味をしっかり捉えなおす作業というものが、とても大切になってくるだろう。

 それから個人的に印象深かったのは、恥ずかしながら初めてtwitterの持つ威力を思い知らされたことだ。中国国内では速攻でアクセスがブロックされたようだが*1、それもむべなるかな。当局にとっては、昨年のチベットの事件の際に各国で起きたような街頭デモよりも、何億という世界のサイレント・マジョリティの「つぶやき」が持つ潜在力の方が、心底恐ろしく感じられるのではないだろうか。このことの意味についても、またおいおい考えてみたい。


BBC
http://news.bbc.co.uk/2/hi/asia-pacific/8135203.stm
http://news.bbc.co.uk/chinese/simp/hi/newsid_8130000/newsid_8136200/8136289.stm(中文まとめサイト
http://newsforums.bbc.co.uk/ws/en/thread.jspa?forumID=9288&start=0&zh=simp(BBS)

Los Angels Times
http://www.latimes.com/news/nationworld/nation/la-fg-china-protest6-2009jul06,0,710782.story

WSJ
http://online.wsj.com/article/SB124685864855299373.html#articleTabs%3Darticle

NYT
http://www.nytimes.com/2009/07/07/world/asia/07china.html?ref=world

CCTVによるまとめサイト(中文) 
http://news.cctv.com/special/wlmq/gundong/index.shtml


6月26日広東省韶関市のおもちゃ工場での事件に関して
http://blog.goo.ne.jp/sinpenzakki/e/429511bb2f00217f39685afd127466a7
http://kok2.no-blog.jp/tengri/2009/06/shaoguanmurder0.html
http://kok2.no-blog.jp/tengri/2009/06/guangdongtoyrio.html