このブログで伝えてきたハイラット(ガイラット)・ニヤズ氏の裁判の件については、その後日本でも、下にも書いたように本ブログの情報発信に遅れること5日にして、ようやく共同通信が配信した。しかしその内容たるや・・「外国メディアの取材を受け、コメントしたことが罪に問われた」・・っていくら中国でもそれだけじゃ罪に問われないって。何をコメントしたのか、という点が問題なんでしょうに。ロイターをはじめ、NYTやBCCなど海外のメディアはずっと早く、かつその点にも踏み込んで報じているのだが。しかも、その後続報の動きはまったく見られない。
しかし、その後中国国内ではこの件に関して大きな動きがあった。まず7月29日に、中国国内のエイズ問題に取り組んでいるNGO愛知行研究所が、ハイラット氏への判決が不当であるとし、抗議する声明を発表した。「ハイラット氏は国家の安全に危害を加えるどころか、事件が悲惨な結果にならないように身を張って発言したのであり、彼こそが真の愛国者だ」というのがその主なロジックである。
その後、彼の釈放を求める連名の声明がウェブ上に掲載され、twitterなどでも転載された*1。署名しているのはいわゆる「維権人士(民主的な権利拡大を要求して活動している人々)」としてよく知られた人々である。
この愛知行研究所は、昨年にウイグル人移民の人権状況報告について詳細なレポートを報告している。これはとても興味深い内容なので以下のsinpenzakkiさんの翻訳をぜひお読みください。内容を読めばわかるように、少数民族のエイズ問題が深刻な状況にあることが、このような調査が行われる動機になっている。
http://blog.goo.ne.jp/sinpenzakki/e/ef8e3071d7d448f580395a456a695d12
http://blog.goo.ne.jp/sinpenzakki/e/1290dc7f916dd7d60a69fa1b911319fc
http://blog.goo.ne.jp/sinpenzakki/e/0ab0b3d0bf3d12157b1ea0b2bb3e4023
http://blog.goo.ne.jp/sinpenzakki/e/02332f63a5b2a638bd8daddb02102ff6
日本のいくつかのテレビ・新聞は、今年の7月5日前後にウルムチを訪問して現地の取材を行ったようだ。しかし、記者がウイグル人にマイク突きつけて「民族間の対立についてどう思いますか」などと答えられるはずもない質問をしている様子には、個人的に違和感をぬぐえなかった。そんなことをしにわざわざウルムチに行くよりは、北京にあるこのNGOを取材して、ウイグル人の人権や民族間対立をめぐる状況について詳しく聞いたほうが、よっぽど有意義な取材ができたのではないだろうか。いずれにせよ、このような中国国内にみられる良心的な声が拡大することしか、事態が少しでも好転させる希望はないのだから。
*1:sinpenzakkiさんの邦訳あり http://blog.goo.ne.jp/sinpenzakki/e/797e9ecaf17385d05528f422b8f2470d