梶ピエールのブログ

はてなダイアリー「梶ピエールの備忘録。」より移行しました。

中国・バブルへの道まっしぐら


 前回のエントリの反応がイマイチだったのでタイトルで釣ってみることにしました。『財経』の記事の続きです。

 「プラットフォーム」の潜在力は今まさに極大化されようとしている。

 例えば、今年以来激増した銀行融資額(手形融資をのぞく)のうち、その大半はインフラ建設に向かっており、地方政府の「プラットフォーム企業」がその受け皿となっている。

  また、「銀信政(銀行の政府に対する与信)」と呼ばれる、政府と銀行の合作による信託商品も流行している。これは銀行が、集めた資金を「プラットフォーム」企業の株式に投資するという投資信託を販売するものである。過去5ヶ月の間に、こういった金融商品の発行額はすでに1000億元を超えており、そのようにして集めた資金は(「プラットフォーム」企業の)資本金に組み入れられている。

 さらに、これまでは知られていなかった「都市投資債」が、その規模を急速に拡大させ、発行高は605億元に達している。県級の都市投資会社などが、土地資産を担保にした債券を発行し、巨額のインフラ建設資金を獲得している。

 政府幹部、および有識者はすでにこの事態を憂慮している。

 一つめのリスクは、地方の「プラットフォーム企業」と財政資金の関係が「乳化融合」しているということがある。「現在いくつかの「プラットフォーム」は資金調達面だけを管理しており、獲得した資金がその後どう使われるのかを把握していない。これは時限爆弾のようなものだ」と、国務院発展研究中心の倪紅日は述べる。

 二つめのリスクは、レバレッジを高めた融資計画が、事実上、中国経済が急速に好転するという前提のものに進められているということである。一旦形勢が逆転し、財政収入が下降し、土地による収益の実現が不可能になると、容易に地方財政の危機が引き起こされるであろう。

 これらの点に関して、一部の専門家は「スカスカだからといって塞いでしまっては元も子もない(あまり規制を厳しくしすぎてもいけない)」という見方を示している。

 国務院発展研究中心技術経済研究部元部長の郭励宏は、「プラットフォーム」を規範化するにあたっては、煩雑な仕組みを簡略化し、プラットフォームと地方財政の関係を明確化し、出資者の責任を確立すべきだと考えている。

 またスウェーデン銀行中国支店のチーフエコノミスト汪涛は、重要なのは、現在の銀行が地方政府の投資資金を穴埋めしている構図を改めることであり、財政中心の景気刺激策を金融中心の方法に変えることであると述べている。また根本的な問題は、明らかに財政刺激策の財源を捻出するため、財政赤字がGDPの3%を超えていることだと指摘している。

 さらに警告に値するのは、地方政府主導の投融資体制は、金融危機後の財政刺激策にかこつけて、さらにその規模を拡大しようとしていことである。

 これについて、中欧国際工商学院教授の許小年は、2009年4月に経済のマクロ指標は回復しているものの、企業利潤は悪化しており、マクロの数字とミクロの数字に乖離が見られることを指摘している。これは目下の政府による投資の効率が低いことを示すものである。「根本的な問題は、政府が本来は投資から退出すべき領域において、「毒酒を飲んで渇きを癒そう」としていることである」と許は述べている。

 地方政府の投融資はもともと複雑・不透明なものであり、目下の地方政府の負債に関しては未だ正確だといいうる数字は存在しない。この点に関する研究は始まったばかりなのである。