梶ピエールのブログ

はてなダイアリー「梶ピエールの備忘録。」より移行しました。

積極果敢な、あまりに積極果敢な


 いまや中華圏、いや東アジアで最も重要な経済誌と言ってよい、『財経』の一つ前の号が今日手元に届いたが、その中で「地方政府融資的狂歓」という特集記事が目に付いた。現在中国で起こっていうことがどういうことなのかを理解するのに格好のテキストだと思うので、とりあえず下手な論評を加えないでその一部を訳出することにしたい。細部で間違っているところがあるかもしれないが、その辺はご勘弁を。

地方政府:融資のお祭り騒ぎ

  「金融危機」は一体どこへ行ったというのだ?今や、地方政府による融資のお祭り騒ぎが始まっている。どの地方政府も、長らく待ち望んだこの幸福な時間を徹底的に味わいつくそうとしている。

  地方政府は「融資プラットフォーム(以下、プラットフォーム)」という手法を思いのままに駆使している。これは、「都市建設投資集団」という枠組みを用いて、地方政府が土地開発を大々的に行うものである。このようなプラットフォームは省・市から県にいたるまで各級の地方に存在しており、一つの地域に複数存在する場合もある。対象となる業種は都市建設から交通、さらに新エネルギーの開発にまで及び、その規模もさまざまなものがあり、政府による融資能力の膨張を加速している。

  いわゆる「プラットフォーム」は、地方政府が土地、株式、現金、国債などの資産を提供し、資産・キャッシュフローが融資のための条件を満たすような一つの企業を迅速に作りあげ、必要なときはそれに財政資金を補填し、各種のルートを利用して資金調達を行い、さらには資金運用を行うなどして、都市建設や公共事業など、様々な項目に用いようとするものである。
 
  「プラットフォーム」の雛形としては、1998年に財政刺激策が行われ、国家開発銀行のソフトな融資が推進されたときに、重慶市が模索して行った国有企業への投資モデルが最も有名である。

  目下この「プラットフォーム」が広く採用されているのは、第一に資源を有効に利用し、資産を活性化するためであり、第二に「プラットホーム」の支援の下で、地方政府が借り入れた資金を自らが所有権を持つ子会社の資本金に組み入れ、一層の融資拡大を図るためである。数倍ものレバレッジを効かせて、投資の飢餓状態を満足させようとしているのだ。

  「プラットフォーム」の実行者にとって、「危機」は眼中にないようだ。彼らにとって重要なのは、現在、財政と信用が緩和されたことにより、千載一遇のチャンスが訪れているということだけなのである。

  一方で、4兆元の財政刺激策は地方に巨大な財政負担金の不足をもたらしている。また一方では、この刺激策は地方に融資拡大の名目と余地を与えている。そうであるならなおさら、一体どこに4兆元の公共事業の資金を負担するだけで満足し、独自の「刺激策」を行おうとしない地方政府があるだろうか?

  「拡張の時は来た、地方政府はこの機会を利用して、いろいろなことを成し遂げようとするだろう。「プラットフォーム」の潜在力は、当然拡充されるだろう」と、財政部財政科学研究所所長の賈康は語る。

  やっとの思い出で形成されたタブー(地方政府による投資への規律)は一夜にして消えてしまった。昨年11月に中央政府が4兆元の投資計画を提出して以来、融資に関する規律はまさにタガが外れた状態になろうとしている。

  これは「プラットフォーム」が単独で招いた事態ではない。もう一つの鍵は各方面からそれに呼応する動きがあるということである。商業銀行、信託会社、証券会社などは、まさに「プラットフォーム」に対し、様々なルートを通じて絶えず「弾薬」を運び続けている。すなわち、融資が可能な場合は融資を行い、それが難しい場合は信託・債券その他の金融政府を地方政府に提供しようとしているのだ。

  この現象をどのように呼ぼうが、その実態は一つである。銀行からの融資資金を「資本金」に粉飾し、地方政府のレバレッジを増加させようとしているのだ。幹部以外は誰も地方政府の総負債率が一体いくらなのか知らないし、資金の使い道やその返済能力に対する疑念もまだ消えていない。ただし金融機関は、政府を信じる道を選んだようである。(続く)