3月30日(月)発売の、『週刊東洋経済』4月4日号のコラム「中国動態」に、「供給と需要のダブルショック、八方ふさがりの中国経済」という記事を寄稿しました。
前回のコラムでも書いたのですが、コロナウイルスの感染防止のための都市封鎖に伴う経済活動の停滞に対し、確かに人民銀行による流動性の供給や、再貸出を伴う中小企業への低利の緊急貸し出しなど、金融政策面での政府の対応は素早かったのですが、財政政策に関しては、現在日本でも議論になっている現金給付なども行われていませんし、財政出動の規模も現在のところGDPの1.2%にとどまっており、国民に行き届く十分な支出がなされているとはとても言えない状況です。その一方で、帰郷した農民工が都市に戻らないことによる供給不足による物価上昇と、十分な補償を受けられない民間企業が相次いで賃下げを行うなどの需要抑制によるデフレ要因が同時に働く、典型的なスタグフレーションの状況を呈しており、まさに「八方ふさがり」の様相を呈しているのが現在の中国経済だと言っていいかと思います。
この難局を切り抜けるには、現状の何倍もの思い切った財政出動を行うしかありませんが、かといってリーマンショック後のような大規模な公共投資は(やらないよりはましであるにせよ)あまり効果は期待できません。追加的な減税や現金給付など、きめ細かな財政政策を地方政府とも連携しながら実施できるかどうかが中国経済が再生できるかどうかのカギを握っていると言ってよいでしょう。日本政府も、中国経済の苦境を他山の石として、素早く、すべての人々の生活を支えるような財政出動を中心とした経済対策を早くまとめるべきではないでしょうか。
さて、2012年の12月より足掛け7年余り続けてきたこの「中国動態」のほぼ月一回の連載ですが、今回の記事をもちましてとりあえず一区切りとさせていただくことになりました。これを機に今後しばらくは、できるだけ一般向けメディアでの時論的な原稿の執筆は控え、専門的な実証研究の方に注力したいと考えております。週刊東洋経済の西村豪太さん、 秦卓弥さんを始め今まで支えていただいた方々に改めて感謝いたします。どうもありがとうございました。