梶ピエールのブログ

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関志雄『中国経済革命最終章』ISBN:4532351537

国有企業改革、所得格差、金融改革など現在中国経済が抱える問題点についてスタンダードな経済学と最新の情報をベースにバランスよく解説したもので、内容的には以前紹介した大橋英夫さんの本とスタンスがよく似ているのだが、やはりこちらの方がなんといっても読みやすいし値段も手ごろである(ビジネス書としてはこれも重要)。
 経済改革についての新左派と自由主義者の論争もフォローするなど、ジャーナリスティックな関心にも十分こたえうる中国経済の入門書としては、(タイトルを除いては)かなりオススメできるといっていい。

 「世界読書放浪」のnetoさんが以前、唱新氏の著作について、こういった50−60年代に生まれた世代は自分達が改革開放の恩恵を十分に受けているので、外資やその技術移転の重要さをよく認識している、ということを書いておられた(http://www.doblog.com/weblog/myblog/33838/1391342#1391342)が、それは香港出身であるがちょうどその世代の生まれであり、中国人としての明確なアイデンティティを持つこの本の著者にも当てはまるのかもしれない。
 関氏は、愛国心という点ではそこらの反日青年に負けないものを持っているのだと思うが、にもかからずあえて、というか恐らくはそれゆえに、特にこの著作では現実の中国経済に対してはかなりシビアな見方をしており、今後の持続的な発展のためには一党独裁の廃止と民主化が不可避だという主張にたどりついているのが印象的である。

 関氏のような考え方をする中国人がいるということは、必ずしも彼の国の人々の愛国心が対話の妨げになっているのではなく、たとえ愛国主義者であってもきちんとした経済学の素養を持ち現実を客観的に捉えることの能力を持った人物とは、十分生産的な対話が成り立つ、ということを示唆するものであるように思われる。

 ということで、「まず歴史を学べ!」と日本人に向かって叫んでいる反日青年たちに対して、「だったら君たちはまず経済学を学べ!」と呼びかけてみるだけの価値はあるかもしれない。