梶ピエールのブログ

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想像を絶するラーゲリ体験

草原のラーゲリ

草原のラーゲリ

 日本でも、これまで内村剛介石原吉郎の著作、あるいはミュージカル『異国の丘』NHKスペシャルで放送されたドラマ『望郷』など、旧ソ連での収容所(ラーゲリ)体験を描いた回顧録やノンフィクションが数多く発表されてきた。
 しかし、旧満州国の領土に組み込まれたモンゴル人居住地区に生まれ、ハルピンの大学を卒業した後国共内戦期に留学先のモンゴル人民共和国で突如逮捕・拘留され、その後30数年にわたりモンゴルのラーゲリ内蒙古青海省の労働改造所を転々としたこの本の主人公の体験は、その過酷さといい、彼を取り巻く政治状況の複雑さといい、まさに想像を絶する。
 モンゴル民族と言う「強国のはざま」で翻弄され続けた人々の現代史について知るとともに、民族問題の難しさと恐ろしさを考える上で、よい本だと思います。