竹中氏の公式ウェブサイトでもアナウンスされているので、知っている人も多いかも知れないが、これまでにも土地投機をめぐる不正問題を追求したりSARS問題における行政の対応などを批判するなど硬派の報道姿勢で知られる中国の経済誌『財経』が1月23日号で竹中平蔵大臣に対するロングインタビューを中心にした「日本の改革を解読する」という日本経済の特集記事を組んでいる。竹中大臣以外にも田中直毅、加藤寛、渡辺修の各氏や多数の財界人に対してもインタヴューが実施されており、それらのインタヴューの内容は項目ごとに分けられ、それぞれに記者による詳細な解説が加えられるという、非常にボリュームのある特集となっている。
記事の内容は以下の通り。
日本の改革を解読する
http://caijing.hexun.com/text.aspx?sl=2319&id=1500452
復活:その自信はどこから来るのか
http://caijing.hexun.com/text.aspx?sl=2319&id=1500453
金融改革:声なき革命
http://caijing.hexun.com/text.aspx?sl=2319&id=1500454
郵政改革と「小さい政府」の目標
http://caijing.hexun.com/text.aspx?sl=2319&id=1500455
「日本式資本主義」を定義する
http://caijing.hexun.com/text.aspx?sl=2319&id=1500456
さらに同誌記者による「改革のコストと改革を行わないコスト」という記事が掲載されている。
さて、その内容だが、ざっと目を通した印象では日本の長期低迷の原因として金融機関の不良債権問題など構造的な要因をきわめて重視し、構造改革の重要性と困難性については極めて熱心に記述する一方で、これまでの日銀の金融政策の問題点などにはほとんど触れないなど、全体として小泉内閣による構造改革路線に極めて好意的なスタンスに立った記事だといっていいだろう。たとえば、以下のような同誌記者による記述。
经济学家们说得很清楚,日本的经济衰退不是周期性,而是结构性的;结构性改革的艰难,造成了日本经济复苏的迟滞。
(訳)経済学者たちは、日本の経済衰退は周期的なものではなく、構造的なものであると明言している。構造改革が非常に困難であることが、日本経済の回復を遅らせてきた。
日本的产业−金融−政府政策一体化,造就了强大的社会利益集团,其原有的终身雇佣制也导致国民对传统体制的依赖。因此,纵使“小政府”和进一步市场化对国家的长远经济发展更为有利,这种转轨却因为无法分摊成本而无法启动。
(訳)(これまでの)日本は産業界・金融界・政府(の政策)が一体化した、強大な社会的利益集団を形成していた。また従来からの終身雇用制度が、日本国民の伝統的な体制への依存をもたらしてきた。このため、「小さな政府」を実現し、より一層の市場化を推進することが国家の長期的な経済発展にとって有益なものであるにもかかわらず、そうした改革路線はこれまでそのコストの分担問題がネックとなり、実行に移せなかったのである。
これらの報道スタンスからは、日本経済自体に対する興味もさることながら、日本の経済回復をその「構造改革」の成功に帰することで、中国国内においてもより市場主義的な改革の推進が必要だという「改革派」的な主張につなげていこうとする、一種の政治的な意図の存在が見え隠れする。
とはいえ、この特集記事全体が相当よく調べて書かれていることは事実であり、中国のマスコミにおいて政治的なバイアスがほとんどかからない形で日本経済に関するこれほど詳細な紹介記事が発表されたことはやはり注目すべきだといっていいだろう。興味のある方は、インフォシークの翻訳サービスなどを用いて拾い読みしてみてはいかがだろうか。