先日公表された中国の上半期のGDP成長率が前年比10%を超えるものだったことから、経済過熱への警戒感から早速中国人民銀行が今月に引き続き来月にも預金準備率の0.5ポイントの切り上げを発表するなど、中国内外で金融政策をめぐる議論が活発している(中国語のまとめサイトとしてはここが便利)。
その中で、7月21日付けのウォールストリート・ジャーナルにDavid Altig (クリーブランド連銀副総裁、http://macroblog.typepad.com/macroblog/)とNouriel Roubini(ニューヨーク大学スターン・ビジネススクール、http://www.rgemonitor.com/)による人民元の動向をめぐる往復メール形式の議論が掲載された(閲覧無料)。二人とも著名なエコノミストであるだけでなくブロガーとしても大活躍しているので、アメリカの経済系ブログがこぞってこの記事を取り上げている。
Has China's Yuan Tinkering Changed the Global Economy? - WSJHas China's Yuan Tinkering Changed the Global Economy?
ざっと読んだ感じをいうと、Roubiniは現在の中国経済は明らかに過熱状態にあり、それを解消するためには、何をおいても現在の硬直的な為替レートをより柔軟な方向に改革すべきだ、とかなり強硬に主張している。このまま実質的なペッグ政策を続けるなら貿易不均衡をバランスさせるために実質為替レートが切りあがる、すなわちインフレの発生が不可避であるが、それは経済の安定性の点から望ましくないからだ。Roubiniはこのような観点から人民元は年内に少なくともあと5%は(ドルに対して)切りあがるだろう、という見通しを立てている。
それに対し、AltigはRoubiniの議論に基本的には同意しながらも、現在経済が過熱気味であるにも関わらず十分な金融引き締めを行えない原因としては為替レート制度だけではなく国内金融制度の問題も大きいとし、どちらかというと為替レートの改革よりも国内の改革を優先させたほうがいいんじゃない、という立場をとっている点で、両者のスタンスには若干の違いがみられる。
僕はどちらかと言うとAltigの意見に賛成だが、皆さんはいかがでしょうか?
ちなみに二人が人民元について意見を戦わせるのは、これが二回目らしい。アメリカの学界での最近の中国経済への関心の高まりを改めて感じさせる。
ちなみに、昨年のやりとりはこちら。