気になっていた『諸君』5月号の水谷尚子氏によるラビア・カーディールさんのインタヴュー記事のコピーを実家から送ってもらう。非常に重たく、色々なことを考えさせる記事である。
記事の中で最も多くの人の目を引くのは恐らく獄中での過酷な体験の記述だろう。ただ、僕としては、それ以上に、彼女がもともと反政府的な運動を行っていたわけではなく、あくまでも現政権で多くの役職につきながら少数民族問題の改善を訴える体制内改革派であった、ということに注目したい。
このことは、一見現政権を支持しているように見えるウイグル人エリート層の中にも、政府に対して批判的な考えを抱いている人々は決して少なくはないであろうこと、しかし現状ではそれを何らかの形で表に出すことには大きな困難を伴う(ので表には出ていない)こと、を示しているように思われる。
また、改革開放後の中国社会で彼女が商業の才能を開花させるまでの描写、さらには経済・政治的に地位を得てから彼女が行った、マイクロ・クレジットを通じた女性の自立促進運動と、その挫折のいきさつも興味深い。彼女のような優秀で人望もある体制内改革派をつぶしてしまうことは、現政権にとっても大きな損出であったはずなのだ。今後の中国政権がそのコストに気がつき、今は海外で発言を始めた彼女のような人々の声に耳を傾けていく余地があるのかどうか、は今のところわからない。しかしその条件の一つが国際社会の関心の高まりであることは間違いないことだろう。
関連する映画・書籍が数多く出されているチベット問題に比べても、新疆ウイグル(東トルキスタン)の問題については、たとえ中国を専門とする研究者であっても知らないことが多すぎる。まずは少しでも知ること、関心を持つことから始めるべきではないだろうか。
参考; ラビア・カーディルさんの米議会公聴会証言について
http://kok2.no-blog.jp/tengri/2006/04/post_2b8e.html
http://kok2.no-blog.jp/tengri/2006/04/2_076a.html
http://kok2.no-blog.jp/tengri/2006/04/post_5916.html
新免康「新疆ウイグルと中国政治」
http://www.jaas.or.jp/pdf/49-1/37-54.pdf