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ニコラス・クリストフ氏の中国批判記事

23日付のニューヨーク・タイムズ紙のオピニオン欄に、現在ダルフールにおける虐殺への関与で批判を浴びているスーダン政権と密接な関係を持っているとして中国を名指しで非難する論説、'China and Sudan, Blood and Oil' が掲載された。執筆者は従来より中国・日本に対する批判的な報道姿勢で知られるニコラス・クリストフ氏である。内容は一読すればわかるよう中国の現政権にとって極めて厳しいものとなっている。ニューヨーク・タイムズのオピニオン記事は有料のようなので、とりあえず以下その内容を要約しておく。

 記事の中でクリストフ氏は、まず現在議会で中国への非難が高まっているアメリカの貿易赤字の問題は、アメリカの貯蓄率が低いことが第一の原因であって、そのことで中国を非難することは適当でない、と指摘している。その上で、中国が真に非難されるべきなのは、先日のエントリでも紹介した趙岩氏の拘留に象徴されるジャーナリズムへの弾圧、そして「ジェノサイド」(を行っている政権)を支持している、という二つの点についてであることを強調している。

 クリストフ氏によれば、中国はこの30年間で二回、国家的「ジェノサイド」を支持している。一回目はカンボジアポル・ポト政権による虐殺であり、そして二回目が現在のスーダンである。中国のスーダンからの大量の原油購入は、スーダンにAK-47などの中国製の武器を購入する資金源を提供している。そして、それらの武器がダルフールでの虐殺に使用されてきたのだ。また、今月になってスーダンの支援を受けた武装勢力が隣国チャドに侵攻した件について国際社会からの追求から逃れることができたのも、中国によるサポートがあったからだ、とされる。
 
 ブッシュ政権は、現在少しだけこの問題に積極的な姿勢を見せ始めているものの、これまでダルフールにおける「ジェノサイド」への介入には高い優先順位を与えてこなかった。一方ヨーロッパ諸国はこれまでこの問題に全く見て見ぬふりをしてきた。またアラブ諸国もこの問題に沈黙を保ってきた。
 
 そしてスーダンダルフールの問題に国際的な関心が集まることを妨げてきた最大の障害が、中国の存在であった。国連でアメリカとイギリスがスーダンに対しささやかな制裁を発動しようとしたときも中国とロシアの反対によって実現しなかった。

 中国がスーダンに対し寛容な態度をとり続ける最大の原因は原油の存在である。90年代半ば以降中国は原油の純輸入国となり、それ以来原油供給の確保に奔走するようになっていった。結果として、スーダン、イラン、ミヤンマーといった「世界のならず者('world's thugs')」との関係を深めることになった。
 スーダンの生産する石油の60%は中国に輸出されており、両国は経済的にだけでなく武器輸出などを通じて軍事的にも関係を深めつつある。そしてこれまでダルフールやチャドにおいて、子供や女性を含む多くの人々が中国製の武器によって殺されてきた、と先月にも実際にスーダン・チャド国境を取材してきたクリストフ氏は指摘する。
 
 クリストフ氏は、この問題が中国において直接のタブーになっているわけではないもののほとんど関心をもたれていないとして、中国の1300万人のブロガーがこの問題に関心を持ってくれるよう希望を表明している。そして、今後の中国の台頭が、国際関係における責任ある振る舞いを伴ったものになるかどうかが、21世紀における最も中心的な問題になるだろう、という指摘でこの記事を結んでいる。


ウィキペディア「ダルフール」
 同 「ダルフール紛争」
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