梶ピエールのブログ

はてなダイアリー「梶ピエールの備忘録。」より移行しました。

朝鮮半島研究の現状

最近出た木村幹氏の『朝鮮半島をどう見るか』(集英社新書)を読み、いろんな点で考えさせられた。

わが国においては「専門家」たちもまた、朝鮮半島に対する二つのステレオタイプに深くおかされてきた。私自身も、それぞれのステレオタイプを奉じる「専門家」たちから何度となく旗幟を明らかにするように迫られてきた。朝鮮半島に対して「否定的な見方」を持つ人々からは「あなたの描く朝鮮半島には史観がない」と言われ、逆に「肯定的な見方」を持つ一部の人々からは「朝鮮半島についてそのような否定的な問題を扱うとは、わたしはあなたの人間性を疑う」とまで罵倒される・・
 ともあれ、重要なのは、日本の「専門家」はもはや自分たちのステレオタイプ以外の朝鮮半島像を認めることさえできなくなっている、ということだ。このような「専門家」に多くをたのむことは難しい。世界がそんなものに注目しないのも当たり前だ。残念ながら、日本の朝鮮半島「専門家」たちは、そのような情けない状況に置かれているのだ。


 少なくとも彼の言っていることにどれだけの正当性があるのか判断できる立場に僕はないし、そこまで言うんだったら業界以外の人間に対してその「情けない」半島研究の具体例を示して欲しかった、という気がしないでもない(例えば和田春樹氏の研究について彼がどのような見解を抱いているのか聞いてみたい気がする)。でも、朝鮮半島研究の分野で同業者に向かってここまで威勢のいい啖呵を切ることのできる優秀な研究者が出てきたことは感慨深い。単純に比較はできないけれど、果たして中国研究の分野で、先輩たちに向かってこれほどのゴーマンをかませる人間が、また仮に誰かがゴーマンをかましたとしてそれをまっとうに受け止めることのできる研究者がどれだけいるだろうか。

 ところで、そのような「情けない」半島研究については、例えば下記のようなサイトでその一部が取り上げられ批判されている。
http://www.asiavoice.net/nkorea/books.html

・・・と思ったら、ここもいつの間にか新装開店してブログになっていた。朝鮮半島「専門家」たちにはこういうサイトの存在はどのように受け止められているのだろう。
http://www.asiavoice.net/nkorea/index.html