この週末、仕事で東京に行く予定があったのでその足で六本木ヒルズの森美術館でロングランで開催されている艾未未(アイ・ウェイウェイ)展を見にいった。しかし来てたのはカップルばっかりだぜ!
艾未未という人はとても興味深い人で、改革開放後反体制的な前衛芸術運動にかかわりアメリカで活躍するが90年代に帰国、世界的な著名なアーチストとなり、北京オリンピックのメイン会場「鳥の巣」の設計政策にもかかわっている。現代中国では、当初は反体制的なイメージで世界的に注目された映画監督やアーチストがある程度「大家」になるとすっかり当局と癒着してしまったり、単なる銭ゲバか色ボケおやじにおさまってしまうケースが本当に多いのだが、艾未未は自分のかかわった「鳥の巣」完成の過程も自己言及的な批判の対象にしてしまうなど、一貫してとんがった姿勢を持続させている人のようだ。
最近では四川大地震の際に校舎倒壊の犠牲になった児童たちの名前を調査する活動をおこなっており*1、その活動にかける彼の思いは、展覧会でも出品されていた、児童たちのバックでパックで作られた巨大な龍のモニュメントから感じ取ることができる。さらには、同じような立場で活動していて国家政権転覆罪に問わた人物の公判に証人として出廷するため成都に赴いた際に、当局との間にトラブルを起こして拘束までされている*2。
・・などと偉そうなことをいったものの、現代美術には疎くて彼の作品に触れるのは全くの初めてだったのだが、クラフトマンシップに代表される「伝統」を強調しながらもありがちな近代批判におちいらず、かといって「伝統を取り入れた超近代」としての現代中国を無批判に称揚するのでもなく、あえて微妙な立場に身をおきながら現代人が進むべき道を模索しようとしているクリエータだという印象をもった。
自身が拘束されるきっかけになった成都での顛末を記録したドキュメンタリーも製作されているようなので、できればこれもそのうち日本で公開されて欲しい。