梶ピエールのブログ

はてなダイアリー「梶ピエールの備忘録。」より移行しました。

さわやか北京


 実は昨日までぶらっと北京に行っていたですよ。日中はもうすっかり春の陽気で、風はやはり強かったものの、日本で伝えられるような黄砂もなくて実にさわやかなものでした。おいしいものもたらふく食べたし、若い留学生たちとも知り合いになれたし、やっぱり北京はいいなあ。

さて、北京最後の日だった昨日は、調べ物とか書店めぐりも一段落ついたので、それこそぶらっと大山子798芸術区に行ってきた。ここは廃棄された国有企業のプラントを改装したギャラリーやブティックが立ち並ぶ広大なアート空間であり、中国の現代アートの先端を象徴するようなイベントが数多く開催されてきた。この辺の事情は下の牧陽一さんの本に詳しい。現在では北京の学生などに「どこか北京で面白いとこない?」と尋ねるとまずここの名前が挙がるような、かなりメジャーな人気スポットとしての地位を獲得しているようだ。

中国現代アート (講談社選書メチエ)

中国現代アート (講談社選書メチエ)

 今回は改装中のギャラリーも多く、最初に期待していたたほど現代社会に対する批判性の強い作品には出会えなかったというのが正直な印象だ。何かイベントが開催されているときに行けばまた印象が違ったのかもしれないが。むしろ、上の写真のようにいかにもメッセージ性の強そうなポスターに興味を引かれて中に入ってみると普通のブティックだったり、工場の中には今も稼動しているところがあって、現代芸術とは縁もゆかりもなさそうな工員たちが日常的に行きかっっていたり、そういう「なんでもあり」性が今の中国を象徴しているということなのかもしれない。
 ただ、これだけ「人気スポット」としていわば市場社会の中に「取り込まれた」存在になってしまうと、今後作品の力だけで「異化作用」を実現していくのは大変じゃないのかなあ、とは門外漢ながらに思ったことであった。