朝日出版社第二編集部のブログ「現代中国:現在と過去のあいだ」を更新しました。
第1章:烏坎村と重慶のあいだ──公共性と一般意志をめぐる考察──(2)
麻生晴一郎さんには、烏坎村を取材された際の貴重なお写真を提供して頂きました。ありがとうございます。
以下に、一部を引用しておきます。
余談ながら、僕にはどうしても、このような記述と、先般の日本政府による尖閣諸島「国有化」をめぐって各地で吹き荒れた反日デモ、および暴徒化した群衆による日系企業や日本食レストランの打ち壊し、というまだ記憶も生々しい一連の事件とを結びつけずにはいられない。もちろん、近代的な生活を享受している多くの市民は企業や飲食店への破壊行為を冷ややかな眼で眺めているし、一時は「愛国」に名を借りた暴力に対し部分的に寛容な姿勢をみせた政府も、事件後すぐに「理性愛国」のスローガンを掲げ、暴力を容認しない姿勢を鮮明にしている。しかしながら、共産党指導部あるいは政府系のメディアが一斉に日本政府を「邪(よこしま)」なものとみなして道義的に非難するその行為と、「邪」なるもの=「日本」につながる企業や店舗を標的とした群衆の破壊行為が、あまりにタイムラグなしに連鎖していくさまには、どうしても民衆暴力と権力との関係における前近代との連続性を実感せずにはいられないのである。