梶ピエールのブログ

はてなダイアリー「梶ピエールの備忘録。」より移行しました。

なぜ今になって大騒ぎするのか?

1月8日付の日経新聞に以下のような記事が掲載された。

中国、物価上昇圧力一段と 中銀、手形金利上げ

【北京=高橋哲史】中国で物価上昇圧力が高まっている。金融緩和で生じた過剰流動性が物価全般を押し上げつつあるほか、年初からの大雪と寒波の影響で野菜などの価格が高騰しているためだ。中国人民銀行中央銀行)は7日、市場から資金を吸収する手段に使っている手形の金利を5カ月ぶりに引き上げ、インフレ予防の構えをみせた。景気動向をにらみ適度の緩和を維持する一方、物価にも配慮する両にらみの金融政策を迫られている格好だ。

 人民銀が7日発行した3カ月物の中央銀行手形の利回りは約1.37%となり、前回12月29日の発行分よりも約0.04%上昇した。同利回りが上がるのは昨年8月13日以来、ほぼ5カ月ぶりだ。

 伊藤洋一さんのブログで知ったのだが、NYTも同様の報道を行っているらしい。

http://www.nytimes.com/2010/01/08/business/global/08chinaecon.html?em

The People’s Bank of China announced Thursday that the yield from its weekly sale of three-month central bank bills had inched up to 1.3684 percent. The yield had been stuck at 1.328 percent since Aug. 13.

An increase of less than 0.05 of a percentage point might sound small, but economists said it was a harbinger of more interest rate increases to come.

“It is a turning point,” said Ben Simpfendorfer, an economist in the Hong Kong offices of Royal Bank of Scotland. “There is a convergence of events that will lead to higher rates.”


 正直なところ、なんでこれで大騒ぎする必要があるのか、さっぱりわからない。ちなみに2008年7月からの中央銀行の3カ月手形のインターバンク市場での利回りのトレンドはこんな感じなんですけど。*1



 たしかに報道にあるように1月7日とか8日の利回りは約1.37%で、12月29日当たりと比べると約0.04%上昇しているのだが、グラフのトレンドをよく見ればSo Whats? という感じだ。これを 'turning point'というくらいなら、2009年7月に同じ手形の利回りが0.2-0.3%上昇した(上のグラフでは日付が小さすぎて読めなくてすまそ)のは一体何だったというのだろうか?また、2009年7月といえば、それまで0.8-1.0%のところに張り付いていた上海銀行間コールレート(Shibor)が一気に0.6-1.0%も上昇したのだが、それをなぜ誰も問題にしなかったのだろうか?

 まあNYTの記者さんが梶ピエールのブログをチェックしていなくても誰も責められないだろうけど、国内でも私のエントリに反応してくれたのは津上俊哉さんくらいなんですけど。

  Shiborのグラフと、上記の中銀手形の利回りのグラフをみれば、危機後の中国の金融政策の「Turning Point」があったとしたら、昨年の7月ごろに第一回目のそれがあったのであり、今回がそれに続く「Turning Point」になるかどうかを判断するのは、どう考えても時期尚早だと思うのだが。それとも僕が何か大きな勘違いをしているのだろうか?教えてエライ人!

*1:データはCEIC の一カ月無料トライアル版より入手。期間は2008年7月1日から2010年1月8日までの日次データ。エクセルのグラフの貼り付けがわからなかったのでデジカメで撮影