8月4日(月)発売の、『週刊東洋経済』8月9日・16日号のコラム「中国動態」に「BRICS開発銀行を中国脅威論から語る過ち」という記事を寄稿しました。去る7月15日、BRICS5カ国(=ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)による首脳会議で正式に設立が合意されたBRICS開発銀行と外貨準備基金について、それを日本としてどう受け止めるべきか、という視点から解説しています。タイトルにもあるように、これらの独自機関の設立は中国の「野心」や「脅威」の象徴というよりもむしろ新興国の「焦燥感」「脆弱さ」の表れであり、その核心はむしろ改革が進まない「IMF問題」にある、というのが私の見方です。
先日、BRICS開銀とセットで語られることの多い「アジアインフラ投資銀行」構想について、津上俊哉さんがご自身のブログで書かれており、私としても大変参考になりました。
http://www.tsugami-workshop.jp/blog/index.php?year=2005&month=6&categ=
この問題の根底には、中国が求める「国力増大に見合った影響力・発言権の増大」をどのように受けとめるのかという共通問題がある。日本だって、世銀やIMFでの出資比率を高め、ADBを創設した過去があるから、中国の要求には合理性があることを認めざるを得ない。
中国も日本と同じ道を進もうとした。リーマンショック後 G20が成立し、IMFや世銀など既存の国際金融機関における新興国の発言権増大を目指した改革が決まったのだ。しかし、この改革は実現していない。この改革が米国の予算負担や協定改正(筆頭株主としての米国の地位の低下)に繫がり、米国議会での承認を得られそうもないからだ。中国が独自機関の設立に動いているのは、既存体制の下で「見えないガラスの天井」に突き当たってしまったから、とも言える。
この点に関しては私も全く同意見です。日本の各界には、構造的な脆弱性を抱える国際金融秩序について、過去の経験を踏まえて主体的に発言していく姿勢こそが求められているのだと思います。