小田中先生のブログid:odanakanaoki:20050525より。
歴史学方法論の回顧と展望という点では「エピローグ」(フェリペ・フェルナンデス=アルメスト)が興味深い。彼は、記憶の問題について、それを「言語」のレベルではなく「認知」のレベルで捉えるべきことを説く(249〜50ページ)。つまり、もはや「言語」は「この紋所が目に入らぬか」的な最終審級(独立変数)ではなく、「認知」によって説明されるべき、単なる従属変数とみなされなければならないのだ。これは、件の「言語論的転回」のインパクトを歴史学者がどうこえてゆけばよいかについての、示唆的な指摘として読まれなければならない。
とても面白そう。野次馬的な勝手な感想を言えば、スティーブン・ピンカーと保苅実をつなぐような思考が、歴史学の最先端では行われはじめているらしい、といったところか。この二人の本を同じくらいワクワクしながら読んだ人間としては、今後の議論の深まりがとても楽しみである。ただ、僕の周りで歴史をやっている人たちの中で、ピンカーなどの認知科学の本を面白がって読んでいる人はほとんどいなさそうなのが、少し残念ではある。