梶ピエールのブログ

はてなダイアリー「梶ピエールの備忘録。」より移行しました。

秦郁彦、本宮マンガを語る

 稲葉振一郎さんをして「これじゃ『世界』なんていらないじゃん」と言わしめた(http://d.hatena.ne.jp/shinichiroinaba/20041203#p4)ほどリベラルかつ柔軟な論考が載ることの多い最近の『諸君!』だが、1月号(http://www.bunshun.co.jp/mag/shokun/index.htm)では、例の本宮ひろ志国が燃える』を論じた秦郁彦の論考(「南京事件で燃え尽きた本宮ひろ志アイリス・チャン」)も興味深い。

 まあ、タイトルセンスは相変わらずだが(実はアイリス・チャンのことはちょっとしか触れていない)、専門の歴史家が初めて『国が燃える』を本格的に論じた論考としてかなり貴重なものだと思う。
 どうも秦先生は、これまで本宮ひろ志なるマンガ家が存在することすらご存じなかったようなのだが、刊行されている7巻までについて「ストーリー展開が巧みで、なかなか読みごたえがあった」とかなり好意的に評価した後、「問題の南京虐殺の描写は、例えばわたし自身がやらせだと断定した「証拠写真」をそのままカットに使用していたり、あまりにも資料考証がずさん」として厳しく批判している。

 このマンガに対する「左」の一般的な反応が「ウヨクの言論封、殺許すまじ!」であり、「右」の一般的な反応が「自虐マンガ・マンガ家、許すまじ!」であることを考えると、秦氏のこの評価はなかなか興味深いものではないだろうか。

 この件に関しては、また日を改めて。