こちらに来てから論文を中心に勤めて英文を読むようにしているので、全体的な読書量はめっきり落ちているのだが、たまには経済関係以外のものも読んでみようと、出発前にあまり深く考えずに持ってきていたこの本を手に取ったら、たまたま今考えていることと重なる点が多くてなかなか面白く読んだ。
外交のずぶの素人としては、中国問題にも造詣の深い著者ならではの日・中・米間の微妙な外交バランスに関する記述には示唆される点が多かった。また中曽根外交は吉田外交の正統的な後継者としてみなすべきだ、といった指摘も非常に興味深かった。もっとも、戦後の日本外交の「よい点」を一貫して褒めようとする一方で、例えば沖縄基地問題などの戦後日本外交によってもたらされたと考えられるさまざまな矛盾点を(当事者による評価に一言も触れることなく!)あまりに簡単にスルーしてしまう本書の姿勢には、違和感がないわけではない(というか大いにある)。しかし、そういった点については、ある方の表現を借りれば「感想を書くには目下こちらの知識と能力が不足している」ので、とりあえず置いておくことにして、ここでは特に中国に関する記述で興味深かった箇所を抜き出しておきたい。
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