- 作者: 松尾匡
- 出版社/メーカー: 大月書店
- 発売日: 2016/01/20
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (14件) を見る
著者の松尾匡さんからご恵投いただきました。タイトルの通り、改憲に突き進む安倍政権に対し、左派・リベラル派の立場から反緊縮・リフレ政策に基づいたオルタナティブな経済政策の提案を行ったものです。大胆な金融緩和によるデフレ・円高期待の解消という経済政策が、長く続いたデフレ不況からの脱却という点で有効であることを認めつつ、現在の安倍政権による設備投資・建設部門を優遇した経済政策の矛盾を突き、緩和マネーを福祉・医療分野に重点的に配分するという方向性を打ち出すべきだ、という主張を行っています。
私も、基本的にこの方針に賛成です。ただ、「はじめに」から第1章で示されているような、安倍政権の改憲に向けた動きがすべて安倍首相の個人的な政治的野心によるものであるかのような記述は、現実認識として少し甘いのではないかと思います。安倍政権を優秀なブレーンが支えているというのは事実ですが、そのブレーンたちの行動を支えているのは安部首相への個人的な忠誠心というよりも、現実の「中国の脅威」に対する非常に切迫した警戒心であり、「中国の脅威」に対抗する上で安倍首相が「最もましな選択肢」であるという機会主義的行動である、というのが私の実感です。ですので、本書による政策提言がより広範な影響力を持つためには、反緊縮・リフレ政策に基づいたオルタナティブな経済政策が、中国(および韓国)に対する、オルタナティブな外交政策と結びつく必要があるのではないか、と私は考えています。これについては、私もまとまったプランのようなものはありませんが、折に触れ考えたことを書いていきたいと思っています。