梶ピエールのブログ

はてなダイアリー「梶ピエールの備忘録。」より移行しました。

クルーグマン、移民問題を語る。

 日本ではあまり話題になっていないようだが、このところアメリカ議会では米移民法を厳格化動きがあり、それに反対するマイノリティが各地でデモを繰り広げるなど、かなり大きな社会問題になっている。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060327-00000529-reu-int

 反対運動の先頭に立っているのはメキシコ移民のグループだが、中国人社会の中でも関心は高く、各華字新聞も連日かなりの紙面を割いてこの問題をとりあげている。
http://www.worldjournal.com/wj-topic-1.php?nt_seq_id=1331564&sc_seq_id=1885

 そしてポール・クルーグマンもNYTのコラムでこの移民問題を数回にわたってとりあげているので、とりあえずさらっと紹介だけ。
http://select.nytimes.com/2006/03/27/opinion/27krugman.html?hp
http://select.nytimes.com/2006/03/31/opinion/31krugman.html?hp

読者からの反響とクルーグマンによるレスポンスはこちら

 最初の記事では移民の増加がアメリカ社会に与える影響について考察。移民、特にメキシコからの大量の移民はネイティヴ・アメリカン低所得者層の職を奪い、賃金を引き下げ、また社会保障費の増大をもたらす可能性があるが、クルーグマンはその効果をあまり過大視することには警鐘を鳴らしている。そして、現実的な問題として不法移民の流入をコントロールすることが必要だとしながらも、現在問題になっている不法移民および雇用主への厳格な処罰を含む法案は'immoral'な内容のものであり支持できないとする。また、ブッシュによって提案されている短期のゲストワーカー受け入れのためのプログラムも、政治参加の権利のない'Permanent Underclass Woekerを作り出すものだとして批判している。
 二本目の記事のタイトルは'the Road to Dubai'である。ここで「ドバイ」とはクウェートと並んで単純労働のほとんどを政治的権利を外国からの短期の出稼ぎ労働者に依存している社会の象徴として持ち出されている。クルーグマンは、このまま低賃金で政治的権利を持たない移民労働者に非熟練労働の多くを依存する状態が続くと、アメリカ社会の民主主義の土台は崩れ、最終的にはドバイのような非民主的な社会になってしまうと警鐘を鳴らす。そして、彼は記事の終わりを次のような言葉で締めくくっている。「ドバイへの道は善意で敷きつめられている」。

参考: ドバイについて
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%89%E3%83%90%E3%82%A4


※追記:

上記NYTのリンクは有料だったみたいなので(うちは宅配でとっているので見られたらしい)、この記事を紹介したEconomist's Viewのエントリへのリンクを代わりに張っておきます。
http://economistsview.typepad.com/economistsview/2006/03/krugmans_notes_.html
http://economistsview.typepad.com/economistsview/2006/03/paul_krugman_th_1.html

 後者のエントリはNYTの2本目の記事をそのまま紹介しているが、前者はやはりNYT Selectに掲載されている、27日の記事への反響を受けて書かれたもの。以下のように、コラムに対して予想される批判に対して、根拠となる論文のリンクを示し、あらためて移民受け入れのメリット・デメリットに関する論点を整理したもので、紙面に掲載されたものよりこちらの方がわかりやすいかもしれない。

Immigration is an intensely painful topic for a liberal like myself, because it places basic principles in conflict. Should migration from Mexico to the United States be celebrated, because it helps very poor people find a better life? Or should it be condemned, because it drives down the wages of working Americans and threatens to undermine the welfare state? I suspect that my March 27 column will anger people on all sides; I wish the economic research on immigration were more favorable than it is.

ケーキケーキケーキ

 今晩、知人たち(日本人)と食事会をする機会があったのだが、なぜか近所のスーパーで売っている、でかいだけでいかにもまずそうなケーキを食べてみようということになり、好奇心で試してみたら、甘ったるくて、クリームはべっとりしてて、スポンジケーキはしっとりというかべちょべちょで、案の定死ぬほどまずかった。しかし件のスーパーではさも嬉しそうにこのケーキとペットボトルのコカ・コーラをカートに入れている客もいたのだが…あのケーキをコークと一緒に食うなんて…うげえ。想像しただけで吐きそう。