梶ピエールのブログ

はてなダイアリー「梶ピエールの備忘録。」より移行しました。

続・バーナンキ

 というわけで25日付のWSJとNYTを買って読み比べてみたのだが、Web版ではわからない、写真により受けるイメージの違いというのが非常に面白い。まずNYTだが一面の写真で、ごらんのようにバーナンキが実に威風堂々とまるでグリーンスパンを従えるかのように歩いているシーンが使われている。一瞬やらせ写真かと疑ってしまうほど見事な構図だが、なぜかNYTのウェブ版ではこの写真は使われていないようだ(グーグルでイメージ検索してもパク・ソルミが見つかるだけだし・・)。他にBussines欄でも大きなアップの写真が使われていたり、少なくともNYTを見る限り新議長のイメージ戦略はバッチリ、といったところ。
 一方WSJの場合もともとあまり大きな写真を紙面に使わないのだけど、MONEY&INVESTINGの欄でグリーンスパンレーガン以降の歴代の大統領と映っている写真や、過去に紙面を飾ったグリーンスパンの似顔絵など、はっきり言って全体的にバーナンキよりもグリーンスパンの肖像のほうが目立つ紙面づくりになっている。


 で、肝心の記事の内容自体に関してだが、面白いことにNYTのほうが明らかにバーナンキをヨイショしているかというとそうでもなく基本的に両紙ともそれほどスタンスに違いはない。インフレターゲット政策についての基本的な解説、およびそれに対する両者のスタンスの違い、経済学者や市場関係者の反応など、必要な情報が的確にまとめられているという印象を受ける。特に、WSJのNominee May Favor Explicit Embrace Of 'Infration Target'という記事は、インタゲ政策の原理、実際の効果などに関する非常に優れた解説記事で、日本の大手新聞の経済部の方々もたまにはこれぐらいの記事を書くよう頑張っていただきたい。

 ただ若干気になったになった点をあげれば、WSJが全体的になにかというとグリーンスパンを持ち上げ、「インタゲ政策は、グリーンスパンのようなカリスマなき後の次善の策としてはよい」というニュアンスがなんとなく感じられる一方、NYTは新議長が指名される際のブッシュ政権内部でのゴタゴタをことさらに書き立てる傾向が見られることだろうか。


例えば、飯田泰之さんid:Yasuyuki-Iida:20051025がコメント欄で書かれていた

それにしても日経の朝刊はなんとも含みのある不思議な書き方でしたね.「バーナンキ教授ではとても議長は務まらないけど政治的理由からしょうがなく任命されたと(誰の発言とは書かずに)心配する声がある」みたいな「風情」を「におわせる」かんじの...』


件の日経の記事は、以下のような話あたりがネタ元になっているのではないだろうか。

http://www.nytimes.com/2005/10/25/business/25fed.html

People close to the White House say that Mr. Bush's closest advisers were always lukewarm about Mr. Feldstein. Some never forgave him for criticizing budget deficits under President Reagan while he was a top Reagan adviser - an act that might be considered disloyal in the current Bush administration.

Some economists worry that the Fed under Mr. Bernanke could become too academic, losing some of Mr. Greenspan's intuition in recognizing critical changes long before they show up in traditional economic models.

"He's not a maestro, he's a music teacher," said Richard Yamarone, chief economist at Argus Research. "An academic is not the right person for this job."