日中戦争はなぜ起きたのか-近代化をめぐる共鳴と衝突 (単行本)
- 作者: 波多野澄雄,中村元哉
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2018/10/06
- メディア: 単行本
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著者のお一人である木越義則さんからご恵投いただきました。個人的には前著『日本と中国経済: 相互交流と衝突の100年 (ちくま新書1223)』の問題意識とも重なるので、非常に関心のあるテーマです。
- 作者: アンドリュー“バニー"ファン,山形浩生,高須正和
- 出版社/メーカー: 技術評論社
- 発売日: 2018/10/19
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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訳者の高須正和さんよりご恵投いただきました。個人的には、監訳者の山形浩生さんの解説にある以下のようなくだりは、拙著『中国経済講義-統計の信頼性から成長のゆくえまで (中公新書)』第6章の問題意識と重なるので、特に注意しながら読んでみたいと思います。
中国の深圳での実際の生産の現場を体験し,日本のこの手の文章にありがちな,書き手の自国での狭い知見だけをもとに「あれができねー,これもダメ,中国なんか低品質」と決めつけるのとはまったく違うものを見出す。ものづくりに対する別の適応があり,費用と歩留まりのバランスの中で,モジュール化と現場合わせによる細やかな作り込みの合わせ技が実現しているのが,著者自身の苦闘と驚きの中から浮かびあがってくる。
そして,中国に蔓延しているさまざまな偽造やインチキ商品もまた,そうした適応の一部なのだということがわかる。ときに中国の店頭やオークションサイトでは「こんなの偽造するほうが手間がかかって,正規品より高そう」と思えるような代物に出くわすこともある。でも,それも中国の現場においては筋が通っている。そして,そんなものが出現する環境を作り出しているのは,じつは僕たち利用者の(じつにつまらない)嗜好や,理不尽な安値要求だったりするのだ。
そして,知的財産についての考え方も,じつはその環境に対する違う適応でしかない。知的財産権は,もともとイノベーションを促進するための手段ではある(「保護してあげるから,みんなに公開してくださいね」というのが知財だ)。でも,欧米日の先進国ではそれがいまや,既得権益の保護に使われるだけになっている。一方の中国は,「知的財産権保護がおろそか」と批判される。でも,それは新製品開発や量産プロセス改善のイノベーションを大量に生み出す仕組みとなっているし,しかも決してオリジナルの開発者が完全にバカを見るものでもない。特にハードウェアの世界では,中国の知的財産アプローチのほうが筋が通っているのではないか? 著者はそう問いかける。