梶ピエールのブログ

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 6月6日(月)発売の、『週刊東洋経済』6月11日号のコラム「中国動態」に、「中国のGDPは大ウソ?「 誤差」を生む根本を見よ」という記事を寄稿しました。

 中国経済が減速する中、あらためてGDP統計の信頼性に関する疑問がいろいろなところから出てきているようです。確かに以前にも指摘をしたように、中国のGDP統計については国家統計局の情報公開が不十分で、問題点は多いのですが、その分これまで専門家による地道な議論や代替的な推計が積み重ねられてきており、統計の「誤差」が具体的にどういった部分から生じるのかという点について、おおよそのコンセンサスが形成されています。そういった過去の研究蓄積や、基本的な知識が踏まえられないまま中国のGDPは大ウソだ、と声高に言いつのるだけの議論が横行しているのは非常に困ったものです。
 とりあえずコラムの中で取りあげたのはGDPの実質値を求める際のデフレーターの過少評価と、サービス部門の過大評価についてですが、これらの問題についてはコラムでも言及した一橋大学のハリー・ウー教授と香港中文大学のC A.ホルツ教授の論文が参考になると思います。中国のGDP統計の問題に関心のある方は、ぜひ以下の論文をお読みになってください。


Harry X. Wu and The Conference Board China Center, Beijing(2014), "Growth and Productivity Performance Debate Revisited- Accounting for China’s Sources of Growth with a New Data Set" ,Conference Board China Center Working Paper, EPWP1401.

Carsten A. Holz(2013), "The Quality of China’s GDP Statistics", SCID Working Paper, 487.