外交専門誌『外交』のVol.35に、加藤典洋氏の二つの新書『戦後入門』と『村上春樹は、むずかしい』のブックレヴューを寄稿しています。
- 作者: 加藤典洋
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2015/10/06
- メディア: 新書
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- 作者: 加藤典洋
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2015/12/19
- メディア: 新書
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実は、加藤典洋氏の著作はちょうど私が大学に入るころの1990年前後、その著作が出るたびに図書館で借りて読んでいた時代がありました。その後『戦後後論』が話題になってからまた何冊か続けて読み、就職してからはほとんど読んでいなかったのですが、いまちょうど三度目のマイブームが訪れている、といったところです。
ただ、上の2冊については『戦後入門』については戦後日本が「中国韓国と堅実な信頼関係を築けないでいる」ことの理由を「対米従属」の一言で片づけていることに大いに不満を感じました。一方『村上春樹は、むずかしい』の方では、『戦後入門』で全く語られなかった「中国韓国とどのように堅実な信頼関係を築くか」という道筋を、村上作品を手掛かりにして模索する姿勢がみられ、その点が非常に興味深いと考えています。ただ、それゆえに村上作品の「アジア」への姿勢が持つ問題点(それについては拙著『「壁と卵」の現代中国論: リスク社会化する超大国とどう向き合うか』の第11章では指摘したつもりです)を、加藤の言説もそのまま受け継いでしまっている、というのが私の評価です。この点に関してはこのレヴューでは字数の関係で十分に書ききれなかったので、いずれこのブログなどでロングバージョンに書き直したものを公開したいと考えています。