梶ピエールのブログ

はてなダイアリー「梶ピエールの備忘録。」より移行しました。

いただきもの


 中国近代史の研究が進むにつれて、「洋務(李鴻章ら)→変法(康有為ら)→革命(孫文ら)→反動(袁世凱)→軍閥支配→北伐と反共クーデタ―(蒋介石)」といった、中国政府の公式見解に近い、直線的な進歩史観は研究者の間では完全に過去のものになっている(ちなみにいまだにその理解から一歩も出ていない「研究者」によって堂々と出されたという意味で「おどろきの」本がこれ)。当然、そういった研究成果に基づく、各登場人物に関する評価も公式見解もしくは「通説」とは大きく異なることになる。が、通説の人物評価を覆しつつ、新たな評価を当時の中国社会の情勢と関連付けながらわかりやすく提示する作業というのはこれまでほとんどなされてこなかった。それには人並み外れた学問的蓄積と文章力が要求されるからである。中国近現代史の「通説」における悪役No1であり、恐らく日本人の近代中国観を大きくゆがめる役割をはたしてきた袁世凱の評価を見直す作業は、独自の歴史観と次々と意欲作を発表してきたまさに「鬼才」と呼ぶにふさわしい著者だからこそ可能だったと言えよう。真の学問的「おどろき」はこのような書物からこそ得られるはずである。

 


 これからの日本の国際協力のあり方を過去の各国の経済発展から考えようという1冊です。どうもありがとうございます。