昨日まで新型城鎮化の調査で四川省にいました。なかなか面白い話が聞けたのですが、一番印象的だったのは農民の収入が、想像していたよりもずっと上がっていたこと。5,6年前に比べて倍以上になっていると思います。これは農業収入だけではなく、労賃が全体的に大きく上がっているからです。また、今回行った広元なんて10年前にはいかにもパッとしない、内陸の田舎の街だったのが、今回は見違えるようにインフラがきれいに整備されていて、街を走っているのは新車ばかりですし、建設中のものも含めて日本の地方都市をはるかに超える数の高層マンションが立ち並んでいました。でもよく考えてみれば、これは「労働分配率が上がっているのに資本投資(率)が増えている」という、私があちこちで繰り返し述べているパラドキシカルな現象そのものだという気がします。これも繰り返し述べてきたように、資産価格の持続的な上昇期待があるという条件のもとでのみ、このような一見すると矛盾する現象の説明がつくわけですが、とすると今まさに生じているようにいったん資産価格の下落が始まってしまうと、どう考えても現在の状況は持続可能ではないわけです。
・・こう考えるとあまり楽観的にはなれないわけですが、地元の人々の話を聞く限り(政府関係の人が多かったからかもしれませんが)みんな驚くほど楽観的でした。まあ、これだけ確実に手元の収入が増えているのだから、そうなるのもわかりますが・・いずれにせよ、マクロ経済学的に見た中国経済の問題点が、北京や上海などよりも、こういった内陸の中小都市によりくっきり表れている、という点については、今回の調査の目的とは別に非常に興味深く感じました。
さて、9月16日(火)発売の、『週刊東洋経済』9月20日号のコラム「中国動態」に「「外資たたき」では見誤る独禁法問題の本質」という記事を寄稿しました。タイトルの通りの内容で、一部の国有企業が独禁法の適用から免れていることといわゆる「外資たたき」とを混同すべきではないというようなことを書いています。