梶ピエールのブログ

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中国経済の論理を歴史に学ぶための本

上記連載で紹介した文献のうち、最近出版されたお勧めの本二冊を紹介しておきます。

中国「反日」の源流 (講談社選書メチエ)

中国「反日」の源流 (講談社選書メチエ)

 タイトルに惑わされてはいけない。拙文でも強調したように、この本は明清期の中国と江戸時代の日本の社会経済および外交のあり方を比較することで、日中両国が「国家と社会」との関係性をめぐっていかに異なる統治原理の上に成り立っているか、ということに徹底的にこだわったもの。両国の違いはあまりに本質的なものなので、完全に理解しあうことは望めそうにないが、だかろこそお互いを少しでも理解しようとする努力を怠ってはならない、というのが著者のメッセージだと思う。

大恐慌下の中国―市場・国家・世界経済―

大恐慌下の中国―市場・国家・世界経済―

 身も蓋もない紹介の仕方をすると、1920年代後半から1935年の幣制改革にいたる中国経済のダイナミズムを、テミン、アイケングリーン、バーナンキ金本位制に内在する問題点(金の足かせ)こそが大恐慌の発生とその後のデフレ不況の深刻化をもたらしたとする「国際学派」の学説に整合的な形で描き出したもの。こういった観点にたった研究はこれまでありそうになく、本書の元になった英文の書籍は高い評価を受けた。昭和恐慌期の日本経済を考える上でも必読の文献だと思う。