上記連載で紹介した文献のうち、最近出版されたお勧めの本二冊を紹介しておきます。

- 作者: 岡本隆司
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2011/01/13
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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タイトルに惑わされてはいけない。拙文でも強調したように、この本は明清期の中国と江戸時代の日本の社会経済および外交のあり方を比較することで、日中両国が「国家と社会」との関係性をめぐっていかに異なる統治原理の上に成り立っているか、ということに徹底的にこだわったもの。両国の違いはあまりに本質的なものなので、完全に理解しあうことは望めそうにないが、だかろこそお互いを少しでも理解しようとする努力を怠ってはならない、というのが著者のメッセージだと思う。

- 作者: 城山智子
- 出版社/メーカー: 名古屋大学出版会
- 発売日: 2011/02/28
- メディア: 単行本
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身も蓋もない紹介の仕方をすると、1920年代後半から1935年の幣制改革にいたる中国経済のダイナミズムを、テミン、アイケングリーン、バーナンキら金本位制に内在する問題点(金の足かせ)こそが大恐慌の発生とその後のデフレ不況の深刻化をもたらしたとする「国際学派」の学説に整合的な形で描き出したもの。こういった観点にたった研究はこれまでありそうになく、本書の元になった英文の書籍は高い評価を受けた。昭和恐慌期の日本経済を考える上でも必読の文献だと思う。