梶ピエールのブログ

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皇甫平、チベット問題を論ず

 今日気がついたのだが、中国のリベラル勢力を代表する経済誌『財経』のウェブ版になんと「皇甫平」名義によるチベット問題を論じる論考が掲載されていた。

http://www.caijing.com.cn/todayspecx/cjkx/2008-04-30/58921.shtml
http://www.caijing.com.cn/todayspecx/cjkx/2008-04-30/58925.shtml

 「皇甫平」についてはこちらをご覧下さい。
 ざっと目を通したところ、同論考のスタンスは以下の通り。まず3月のラサその他での騒乱に関しては完全に政府側の対応を支持しているものの、カルフール・ボイコットに代表される西側に対する排外的ナショナリズムの盛り上がりには強い警戒を示している。また、大躍進・文革期における少数民族への迫害を率直に認め待遇改善に尽力した胡耀邦の路線を高く評価し、同時に政府のチベット統治は本来清の乾隆帝がそうであったように、豊かな精神世界をもつチベット仏教文化への深い理解に基づくべきだ、と解く。そして、ダライ・ラマが過激な独立勢力をけん制し、中国指導部との対話を通じてチベットに平和がもたらされるよう影響力を発揮することを期待している。
 まあ以上はかなり乱暴な要約なので重要なニュアンスが抜け落ちていることは断っておかねばならないが、少なくとも一時期の中国メディアで主流だった全てを「ダライ集団」の陰謀に帰するような姿勢は微塵も見られない、といってよい。

 ・・皇甫平と胡錦涛自身の考え方との関係はいまひとつよく分からんところもあるのだけど、この辺が政権内部における問題解決の一つの「落としどころ」を代表しているのかもしれない。それが表に出てくるようになった、ということがたぶん重要なんだろう。あとかなり早い段階で胡錦涛とダライ・ラマの対話以外に「解決の道はない」ことを説いていた矢吹晋さんはやはりさすが、かな。