梶ピエールのブログ

はてなダイアリー「梶ピエールの備忘録。」より移行しました。

ウジとか姓とか苗字とか


id:sumita-m:20080419経由で以下のエントリを知る。

http://sicambre.at.webry.info/200802/article_7.html
http://sicambre.at.webry.info/200804/article_17.html

特に以下のような指摘には目からウロコが落ちまくり。

このイエ制度を前提とする日本列島の伝統社会において、家名としての苗字が成立します。イエ制度は百姓(農民だけではありません、念のため)社会においても確立し、百姓の多くも苗字・家名を用いるようになります。江戸時代には百姓による苗字の公的使用は禁止されていましたが、実質的には百姓の間でも苗字が使用されていました。伝統社会における百姓の間では、夫婦同苗字が当然視される傾向が強く、現在の法制用語である氏(俗語では姓・苗字)が、基本的には前近代の苗字を継承していることを考えると、日本における夫婦同姓は、西欧の制度を模倣して100年ほど前に成立したのではなく、多分に伝統社会に根ざしていると言うべきで、それゆえに、明治政府による夫婦別姓の採用にたいする庶民の不満や批判が高かったのでしょう(坂田.,2002,2006)。

 しかし現代の日本においては、夫婦別姓容認論の側を中心として、日本における夫婦同姓は西欧の模倣でたかだか100年の歴史しかなく、「創られた伝統」にすぎないとの物語が定説化してしまった感があり、夫婦同姓を日本の伝統とする見解にたいする嘲笑が見られるのは、残念ではあります。このようにして歴史は「創られる」ものなのだ、との実例を観察するよい機会ではありますが。

以下の本は「創氏改名」の問題の本質を分かりやすく解説した良書だが、上記の解説を頭に入れながら読むといっそう理解が深まりそうだ。

創氏改名―日本の朝鮮支配の中で (岩波新書 新赤版 1118)

創氏改名―日本の朝鮮支配の中で (岩波新書 新赤版 1118)