梶ピエールのブログ

はてなダイアリー「梶ピエールの備忘録。」より移行しました。

このうえ『ナショナリズムの由来』をきちんと論じるのは余りにしんどいので

上のエントリを踏まえたうえで少しだけ塩川伸明先生をダシに使わせていただきますと、

ただ不思議なのは、そのようにマルクスと「資本主義」にこだわる著者が、これほど広汎な主題を扱った本書の中で社会主義についてほとんど触れていないことである。「資本主義を超える」ことを掲げながら、それを達成しなかった「現存した社会主義」という歴史的経験についての、このような無関心は何を物語るのだろうか。問いに答えられないというだけならまだしも、そもそも問いを立てようという姿勢さえ感じられない。私自身が「現存した社会主義」を研究対象としていることから、これは一種の我田引水、無い物ねだりと言われるかもしれない。しかし、「資本主義」という用語を避けて「近代化」とか「市場経済」という用語を専ら使う人ならいざ知らず、論の中心を「資本主義」ということにおいている人が、それと表裏一体の関係にある「社会主義」については無関心でいるというのは、どうにも理解しがたい。

この苦言は全くもっておっしゃる通りかと存じます。