梶ピエールのブログ

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中国の都市非正規就業について

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071222-00000001-rcdc-cn

2007年12月21日、上海の復旦大学発行の「2006中国非正規就業者発展報告:労働力市場の再観察」によると、中国の都市部の非正規就業者の数は1億3000万人にのぼるという。上海市の「新聞晩報」と「解放網」が伝えた。

非正規就業とは、正規の職場での正式な社員契約を結んだ就労ではない、個人経営者や屋台、露店での販売員、家庭内手工業や企業の臨時契約社員などを指す。

復旦大学文科科研所の任遠(レン・ユエン)教授は、この報告書の数字は各企業からの統計によるもので完璧なものではないと説明。実際にはさらに多くの非正規就業者が存在すると指摘している。

↓元ネタ
http://www.shanghai.gov.cn/shanghai/node2314/node2315/node4411/userobject21ai249270.html

 1億3000万人という数字そのものよりも、それが都市就業者の全体の51%にあたるといった方がより驚きをもって受け止められるのではないだろうか。
注意しておきたいのは、このような都市における「非正規就業者」の高い比率は、必ずしも今回の調査によって初めて明らかになったわけではないという点だ。たとえば公式統計による2006年の都市労働力のデータを見ると、それらは国有単位、集団所有単位、株式企業、私営企業、個人業主、外資企業などの伝統的な所有制に基づく項目に分かれているが、それらの項目のうち「個人業主」を除いた全ての項目を足し合わせたものがほぼ全体の50%になる。その残りの部分が今回の調査の「非正規就業者」にほぼ対応していると考えるのが自然であろう。このような非正規就業者の増加は、1997-98年における大規模な国有企業のリストラによって急速に生じたと考えられる。
 また、この「非正規労働者」の数字は農村からの出稼ぎ労働者を含んでいないと思われる。やはり1億人以上だと考えられる農村からの出稼ぎ労働者は、約2億6000万人の都市就業者とは別カテゴリーの「農村就労者」のほうにカウントされているからだ。不安定な雇用のもとより厳しい労働条件で働かざるを得ないそのような出稼ぎ労働者の存在を考慮すれば、都市における実質的な「非正規就労者」の数はさらに膨れ上がることになるだろう。
 上記のような中国の労働統計が、戸籍制度と所有制度という計画経済時代以来の古いカテゴリーをいまだに前提としているために、実態の把握がより難しくなっている、という側面は確かにあるだろう。いまだに登録失業者をベースに計算されている都市失業率についても同じことが言える。都市に住む過半数の人が非正規就労者、という過剰に流動性の高い状況においてどのような労働政策が有効であるのか、ちょっと今の僕には考えがないのだが、まず旧態依然とした労働統計の改革から手をつけたほうがいいのかもしれない。