梶ピエールのブログ

はてなダイアリー「梶ピエールの備忘録。」より移行しました。

「血汗工廠」の労働者を保護せよ。

New economist 'China to crack down on sweatshops' より

China is planning to adopt a new law that seeks to crack down on sweatshops and protect workers’ rights by giving labor unions real power for the first time since it introduced market forces in the 1980’s.

Tsugami Toshiya's Blog「変貌する中国経済 その一」より

 10月9日付けの日経新聞「「経済教室」欄に国際開発高等教育機構主任研究員の大塚啓二郎氏が「中国 農村の労働者は枯渇」と題して、一文を寄せておられる(以下 「大塚論文」 )。
  論旨は2点あり、① 中国の労働集約型製造業を支えていた農村からの労働者が枯渇し、製造業の実質賃金が上昇している。中国でも経済学でいう (都市賃金上昇の)「 転換点」 は既に過ぎた。 ② 今後の中国経済改革の焦点は土地私有制の導入ではないか。なぜなら、現行制度は、一方で所得の上昇した新中間層の住宅需要急増に伴い (農民は土地を取り上げられる一方、不動産業者は大儲けといった) 不動産を巡る許し難いほどの所得格差・不公平を生んで社会の不満を増大させているからである、といった内容である。

 2000年頃まで 「内地から賃金の安い若年労働者が、後から後から無尽蔵に出稼ぎに来るので、広東省の工場労働者賃金は何年経っても 600−700 元/月のまま、上昇しない」 という広東神話がよく語られたものだが、この 2〜3 年間で様相は一変し、ヒトが以前ほど集められなくなった。劣悪な労働環境がもたらす出稼ぎ労働者(「民工」)の人権侵害は深刻な社会問題と化した。13億人もの人口と上述の 「神話」 に寄りかかりすぎた反動が始まったのである。軌道修正の動きは急で、法定最低賃金が一挙に対前年比30%以上引き上げられる事例も生じている。
  賃金問題は広東省だけに限定されない、総体としても 「中国=低賃金」 の構図は既に崩れたと言ってよいだろう。

 中国の非熟練労働者の労働条件を改善しようという動きが広がりつつあるのは、欧米先進国の志高い人々が反スエットショップを粘り強く展開したおかげなのか、それとも経済発展の結果として農村における限界労働生産性が上昇したためなのか、それが問題だ。